KISS ME PLEASE

 






「殺さないんだってばよ?」

動かない足を引きずって自分を追い詰めた人物に近づいていく

「きさまもな」

相手も満身創痍ながらも近づいてくる

二人の距離は静かに近づく

そして、その距離は零になる

















異形と呼ばれるものが居た

封印の母体として、その身に人ならざるものを宿しているものがいた

一人で孤独に耐え、ただ、静かに暮らしていた

そして、彼が庵を離れるのは同じような境遇にあるものを殺すときだけだった

それは、里のメンツを賭けた殺し合い

彼がここまで生きているということは今まで一度も負けていないということなのである

ただ、一度だけ、たった一度だけ彼が勝つことのできないものがいた

そして、互いに生き残ったまま、今日まで変わらぬ日々を過ごしてきた




























彼が暮らす庵にその日、数ヶ月ぶりに客人が訪れた

―――こんこん

「・・・だれだってばよ?」

彼、ナルトは警戒した声で扉の向こうに問い掛ける

「火影様の使いできた、ここを開けてもらおうか」

「・・・・・(パチン)」

ナルトが指を鳴らすと戸は静かに開く

「・・・・・あんたなの?カカシ」

「久しぶりだな、ナルト」

そこにいたのは数少ないナルトの知り会いだった

カカシは持ってきた書簡をナルトに手渡す

「・・・・・・・・・・な!」

それを読んだナルトは驚きと共にカカシを睨む

「どういうことだってばよ?」

ナルトの背後でなにかが動く気配がする

森のおとがざわざわとひいていく

静まり返った庵

沈黙が支配する

「・・・・・・・・・そこに書いているとおりだ」

カカシは重い沈黙に終止符を打つように言う

「わかった・・・・・・じっちゃんに伝えてほしいってばよ。うずまきナルトは今晩火影邸にうかがうって」

「了解」

カカシはそういうとすまなさそうに頭を下げてその場からいなくなた






「・・・・・・・・・もう、終わりかな?我愛羅を殺してまで、この里を護る価値があるのかな?」

庵にはナルトの寂しそうな声だけが響いた




























そのころ、火影邸ではある客人を迎え入れていた

「砂の使いの方々、ようこそ木の葉の里へ」

「・・・・・・・」

木の葉の同盟国である砂の国

そこより風影の書簡を預かってきた3人の忍びがおとずれていた

「これが風影様よりの書簡です」

「確かに」

火影はそれを受け取る

「今夜こちら側からの使いがくることになっている、風影に当てる書簡はそのものに」

「わたしたちはそれまでどうすれば?」

「用意した部屋でゆっくりしていてもらおう」

「・・・・了解」

使いたちはそういうと部屋を出ていった




























夜、切り立った崖の上

ナルトはそこに立っていた

月の光がナルトの長い髪に反射する

「・・・・・・・木の葉の使い、うずまきナルト」

「砂の使い、テマリ」

「同じく、カンクロウ」

「・・・・我愛羅」

ナルトは持っていた書簡を突き出す

「火影より書簡を預かってきた・・・・・・・我愛羅殿以外の使いはそっこくこれをもってたちさってもらうってばよ」

「「・・・・・承知した」」

「・・・・・・」

残された我愛羅とナルトは静かに対峙する

「・・・・・月が、綺麗だってばね」

「・・・・・・・こんな日は血が騒ぐ」

「・・・・・・・・そうだってばね」

ナルトはそういうとチャクラを開放し始める

それに答えて我愛羅も行動を起こす

空気が裂ける音がする

ナルトは鋼糸を操り我愛羅を絡めとる

それに応戦するべく我愛羅は砂を動かす

「っ!・・・・・ぐぅ」

ナルトの背後に迫った砂がナルトを貫いた

ナルトの内側に入り込んだ砂がナルトの身体を犯していく

「!!」

砂の攻撃が命中したことに気を緩めていたのか、ナルトの操る鋼糸が我愛羅の腕を切り落とした

鋼糸はなおもバランスをくずした我愛羅の身体を切り刻んでいく

落ちていく腕

内側から食われていく体

「・・・・・・・我・・・・あ、ら」

ナルトはその場に崩れた

砂に食い尽くされた身体はすでに生きるための機能をはたしていない

「ナルト」

「・・・・・・・・」

我愛羅はナルトの傍に膝をつく

落ちた腕はどこにいってしまったのか

流れる血を気にもせずに我愛羅はナルトの唇に自らのそれを合わせる

「・・・・・・・・」

触れたナルトの唇は温かく少しだけ涙の味がした

「お前を殺してまで、俺は生きていたくない」

我愛羅は砂を無くした腕の変わりに操りナルトを引き寄せる

二人を包んだ砂を纏ったまま我愛羅は崖の上から身を投げ出した




























翌日

崖の下で我愛羅とナルトが発見された

崖の上から落ちたにもかかわらず、二人の死体は綺麗だった

「・・・・木の葉のうずまきナルトおよび、砂の我愛羅の死亡を確認」

だれかがそうつぶやいた

「次の母体を探さなくてはの」

「・・・・・」

火影はつかれきったようにそういった

その横顔には里の長たる威厳は無く、ただのくたびれた老人の顔だった



























どうしてなのかわからないけど、殺したくなかった

なぜか分からないが、死なせたくなかった

好き、だったのかもしれない

好きだったのだろうか?

触れられたかった、触れたかった

温もりがほしかった、与えたかった

でも死んでしまった

だが、殺してしまった

ただ、隣で寄り添っていきたかった

交わることなくとも、寄り添っていたかった

「「たとえ、死んでしまっても」」





END




あとがき

暗い我ナルを書いてみたよ〜〜〜
私に幸せな我ナルはかけないのか?・・・・・・・・・・・・・いや、そんなことはきっと多分無いはず・・・・・・・・・・・
ていうか、これはなに?って感じだね
ごめんちゃいあにじゃ