埋もれる月

 




砂の丘に上る月

熱された砂を冷やすように冴え冴えと輝く

月を見て思い出すのはもう会うことのないかもしれない金色の子供

中忍試験で訪れた木の葉の里

明るく、元気で自分とはそりが合わないと思った

強さなど感じられなかった

だから・・・・・・・

「興味ない」

そう言ったのに

気がつけばあいつを見ていた

試験が始まるよりも早く木の葉の里に着いてしまった俺は

外に出ることもなく、ただ試験の開始日を待っていた

明日が試験開始日だと言う日

何を思ったのか外に出てみることにした

テマリとカンクロウには不信がられたがそんなものは気にもならなかった



























人気のないところを選んで歩いていると寂れたアパートの前にたどりついた

人がすんでいるのか疑わしかったが、休むのには最適と判断してそのアパートの階段を上り始めた

「だれ?」

アパートの一室の扉が開く

顔を出したのは見たことのある金色の髪の子供

「・・・・・我愛羅?」

「おまえはだれだ?」

「・・・・うずまき・・・・ナルト」

チョット困ったように笑って名前を言うとナルトは我愛羅を部屋の中に手招きする

我愛羅は大人しくそれに従う

しかし、部屋に入って我愛羅は目を見開いてしまう

散らばった破片

引き裂かれたカーテン

散乱する家具

真新しい血溜まり

「・・・・あ、ごめん」

ナルトはそう謝ると部屋を片付けはじめる

血の匂いが、ひどく鼻につく

良く見ればナルトの服も所々引き裂かれている

ナルトに怪我後は見当たらない

しかし

「・・・・・・・っ!」

片付けている破片の中にナルトが倒れこみそうになる

「おい!」

思わずその体を支える

(・・・・軽い)

同い年くらいなのにひどく軽いからだ

壊れてしまいそうなのに壊れない危うさ

「・・・アリガト」

ナルトは我愛羅の腕を借りておきあがる

ふらつく体をなんとか支えてまた破片を片付けようとする

「・・・・いい」

我愛羅はナルトをおこした椅子に無理やり座らせる

「・・・・・貧血のときはじっとしていろ」

「・・・・うん」

ナルトは申し訳なさそうにうなずくと言われた通りにじっとする











どのくらい時間がたったのだろうか

貧血のせいでナルトは眠っている

カーテンのない窓から見える月がナルトの顔を照らし出す

ひどく、怖いほどに綺麗なナルトの顔

忘れられた人形のようなナルト



―――ギシ



誰かが階段を上ってくる音

我愛羅は残念に思いながら反対の窓から部屋を出る

今は誰とも会いたくなかった




―――キーーーっ




ドアが開いて相手が驚いているのがわかる

荒らされた部屋はそのままに

血溜まりだけをふき取った

「ナルト?」

訪れた誰かがナルトを起こす

「・・・あれ?」

目の前にいるのが我愛羅ではなくてどうしたのかとナルトが驚く

「・・・・大丈夫か?」

「うん」

ナルトの気配が、張り詰めた気配が緩んでいくのがわかる

知らず唇をかみ締める

(血の匂い)

同じ血の匂いに安心する

アパートからそっと離れる

明日から試験が始まる

今はそのことだけを考える

(・・・・・・・・それでも)

それでも、頭に浮かぶのは

「・・・・・・・・・忘れられた人形」

月の光に照らされた怖いほどに綺麗な

「うずまき、ナルト」

我愛羅は眠れない夜を月を見上げて過ごした





























あのときあの部屋に訪れたやつが誰だったのかはすぐにわかった

ナルトをいつも見ている、ナルトがいつもいている

守っている、守られている

二人の間に入り込むことは難しく

すぐに木の葉の里を離れる自分には到底出来ないこと

だから月を見上げる

あの日を忘れないように

この砂の中に埋もれてしまわないように

忘れられた人形はいまもあの部屋で眠っているのだろうか?

それとも

だれかの腕の中で眠っているのだろうか







END







あとがき

10000HITリクの我愛羅の片思い!
あにじゃに捧げます!
いるか先生出てないけどいい?OK??
ナルトのお相手が誰なのかは想像に任せる!