第二十話 シンジのお仕事





<ネルフ・シンジの研究室>
「映像出します」
声と同時にスクリーンに消滅したアメリカの第五研究所が映し出される
シンジはそれを無表情に眺めると
「・・・・・・・・・で?マユミたちは無事?」
「はい、消滅前に脱出、現在第九研究所にて待機中です」
「そう、じゃあ連絡して、エヴァ参号機は予定を変更して第九研究所に移動、並びに研究の引継ぎと続行」
「了解しました」
ダリアは頷くと連絡をとるために通信機に向かった
現在、ミサキ達はある用事でいない
つまり、現在この研究所にいるのは純粋なシンジについてきた研究員達なのである
一様に沈痛な面持ちである
しかし、いつもとは違い研究室にはある種の緊張感がただよっていた
それは、シンジがネルフに来る前と同じ雰囲気であった
「しっかし、研究所が消滅なんて・・・・・・マナの事件以来だね」
『今回の場合、原因が実験中の四号機あったため、被害総額の半分をネルフで負担されます』
ちょっと困ったように言うシンジにエラは冷静な声で言う
今回の消滅は四号機のS2機関の暴走とそれを止めるためのワームが原因であった
ちなみにワームは昔シンジが対ダミープラグ用に開発したものなのだが、今となってはすっかり無用の長物となっていた
しかし、今回の件で暴走したエヴァを止めるために有効な手段と判断されたため今後の活用が見なおされている
「はぁ、出掛けにとんでもない連絡を受けちゃったなぁ」
シンジはそう言うと用意していたケースを持ってたちあがる
「それじゃ、いってきます」
『いってらっしゃいませ、マスター』
シンジはそういうとその場にいた研究員にも挨拶をしてダリアと一緒にヘリにのりこんだ



























<国連本部・会議室>
「・・・・・・よって、今回のネルフの動きは・・・・・・・・・」
シンジがヘリで向かった先は国連本部であった
(皆さんお忘れかも知れませんがシンジは国連の作戦部特別顧問兼技術者です)
「碇特別顧問はいかがお思いですか?」
「ネルフの行動に関しましては私の関与するところではありません、しかし、ご覧になっているデータからもお分かりのようにネルフによる被害総額は予想を大幅に下回っています。これによって・・・・・・」
などとシンジは長い演説に入る



「・・・・といった具合で、今後とも国連との連携が重要だと思われます」
シンジの長々とした演説がやっと終わった
その時間、約二十分
「特別顧問」
「なんですか?クライン陸将補」
「お言葉ですが、エヴァの件に関してはネルフの独壇場、使徒戦に関しては我々では全くはが立ちません」
「・・・私は国連に「使徒戦で役に立て」と言っているわけではありません、ネルフはあくまでも、対使徒組織です(最近はそうでもないけど)国連には使徒の襲来(本当は僕に会いに来てるんだけど)で起こり得る様々な事への対処を要求しているんです」
シンジは内心の言葉を言わないようにしながらまじめな顔でいう
「「「「「・・・・・・・・・」」」」」
シンジのセリフに納得したように頷く国連のTOP衆であった
「ご理解頂けましたか?・・・・・・いいでしょう、それではこれで解散ということで・・・いいですね?事務総長」
「ああ、それでは各自それぞれ精進するように」
その言葉で「まためんどくさいけど解決しなくちゃ行けないことが起きちゃったよどうしよう」会議が終わったのである













シンジは数枚の書類をめくりながら早歩きで廊下を進んでいる
その隣ではダリアがどこかに連絡を取ったりと急がしそうに動いている
「ダリア、センジュに依頼してた件の報告書を明日中に提出するように言っておいて」
「はい」
「・・・・・これ、再提出、15ページのデータがあってない、修正急いで」
「はい」
ダリアはシンジが突き出した書類を受けとってケースの中にしまう
その間シンジはまた別のファイルを取り出す
「それと、レオとカプリコに連絡はついたの?」
「はい、139分後に合流できます」
歩くペースはかえないで次々と指示を与えていく
「エラ、例の件の作業完了度は?」
『57.689%完了しました』
「予定より送れてるね」
『はい、やはり第九研究所の消滅が予定に支障をきたしているようです・・・・この分ですと予定より53時間ほど遅れると思われます』
エラの言葉にシンジはちょっと考えると
「・・・・第四・第六にも手伝うように言って、そうだね指揮はマユミと・・・パイシス、アリエスに」
『了解しました』
長い廊下もあっという間に終わって目的地に到着した



<国連本部・第2研究室>
「碇博士、お待ちしてました」
白衣を着た老人が笑顔で迎える
「お久しぶりです、Dr.カール」
「シンジ君こっちだよ」
「あ!先生、こんにちわ」
カールの後ろから顔をのぞかせた時田にシンジは笑顔で挨拶をする
時田はシンジの顔を覗き込むと
「ちゃんと寝ているかい?」
とおもむろに言い出した
シンジは相変わらず鋭い時田に笑って誤魔化すと本題に入にことにした
「大丈夫ですよvv(死なない程度にはねてますから)ところで、お願いしていた「G.M」の件なんですけど、どうなりました?」
「う〜〜ん、特に反応はなかったな・・・・あ、でもちょっと気になるデータが」
時田はそう言うとカールに目配せをする
「?」
カールが持ってきたファイルを無言で眺める
「・・・・・・?この数値、なんですか?」
ありえるはずのない数字にシンジが首をひねって聞いてみる
時田達は肩をすくめると
「さぁ」
とだけいった
シンジにも分からないようなものが自分達にわかるわけないといった表情である
シンジはそんな彼らに苦笑するとダリアにファイルを渡す
「ダリア、この数値の解析を手のあいてる人に回して」
「・・・・ヴァ―ゴあたりでよろしいですか?」
「・・・ヴァーゴは素体の調整でやってもらうことがあるから・・・スコ―ピオにでもまわしておいて」
「はい」
ダリアはそう言うとそのファイルもケースの中に収める
時田はそんなシンジを見てしみじみ「大人になったなぁ」と思うのであった
しかし、時田にとってシンジはいつまでも可愛い息子のようである
シンジはそんな時田の思いには気がつかずにもう一度時田に向き直る
「それで・・・・?先生?僕の顔に何かついてますか?」
「いや、子供の成長がうれしくってね」
「はぁ・・・」
いまいちわかっていないシンジに今度は「まだまだ、子供だな」などと思ってしまう時田であった
時田にとってシンジはいつまでも可愛い・・・以下略
シンジが首をひねっていると電話の終わったらしいダリアが口を開いた
「マスター、ジェミニの方の作業が完了したようです」
「そう、なら帰り道で合流するからジェミニに連絡とって」
「はい」
シンジは改めて時田に向き直る
時田は相変わらずにこにこしている
「話は変わるんですけど、先生」
「なんだい?」
急にしおらしくなったシンジに相変わらずの笑顔で答える
「その、第三東京市に来て頂けませんか?」
「なんだ、そんなことかもちろん頼まれればいつでもお邪魔するよ」
シンジのお願いがよっぽどうれしいのか先ほどよりも笑みを深める
しかし、シンジはどこか複雑な表情である
「いえ、その〜・・・・・・・そういうのでは、なくって・・・つまりですね」
歯切れの悪いシンジに流石の時田も首をひねる
「マナが〜、もうちょっと人間的な生活をしたいらしくって・・・・出来たらでいいんですけど、第三東京市で暮らしてもらえないかと」
時田の顔色をうかがいながら口にする
一瞬時田の表情が固まったが、すぐにいつもの笑顔になると
「いいよ」
とっさりいいってのけた
しかしそれで慌てたのはカールである
「時田博士!そんな急に!こっちのほうはどうするんですか!?」
「Dr.カール、大丈夫です」
なにが大丈夫なのかはわからないが時田は譲る気はないようだ
せっかくのシンジとマナのお願いと無下に断るような時田ではない
時田にとってシンジは・・・・以下略
シンジはほっとしたように笑うと
「ありがとうございます!」
そういって頭を下げた
「かまわないよ、久しぶりにマナの顔も見たいしね」
「はい!」
にこにこと笑顔でお互いを見詰め合っている二人の後ろでは


「どうする?時田博士がいなくなったらだれがこの研究室の管理をする?」
「そうですよ!だれが掃除するんですか!?」
「時田博士のお茶は絶品なんだぞ!」
「あ゛〜〜〜〜!今のうちに資料のおき場所聞いておかないと」


などと騒いでいたりもする
「・・・・マスターお時間です」
ダリアがそっとシンジに告げるとシンジは残念そうにしながらも時田に挨拶をして研究室を出ていった
「相変わらず忙しそうだな」
時田は第三東京市にいったらまずシンジの健康管理に配慮し様と考えるのであった
時田にとってシンジは・・・・以下略



























<太平洋上空・ヘリの中>
シンジはシートに突っ伏して仮眠を取っている
ダリアはそんなシンジに毛布をかけると寝やすいように身体をずらしてスペースを作った
「マスターお疲れ様です」
そういうダリアの表情はとても優しさに満ちていた
「さて、我々も向こうにつく間に少し休みましょうか?」
「「「そうですね」」」
途中で合流した三人は頷くとそれぞれシーツの体を沈めた


























<ネルフ・シンジの研究室>
「「「「「ただいま」」」」」
約6時間ぶりにシンジは研究室に戻ってきた
「お帰りなさい兄さん」
「おかえり〜〜〜〜vv」
「お帰り兄様」
待ってましたといわんばかりに飛びついてきた三人(ミサキ、ピオン、シャル)を受けとめながらシンジは優しく微笑む
三人はシンジから離れると抱きつきはしないがシンジにまとわりついて水槽のほうへと向かう
シンジは『AH−13』と書かれた水槽の前に立つと
「ミサキ、バルティエルの回収は?」
「終わったよv兄さんの言う通り霧の中にいたよ」
ミサキはきらきらと光るものの入ったビンをシンジに渡す
「ちょっと実態つかみにくかったけど、兄様の言う通りにA・Tフィールドぶつけたら反応したわ」
シャルが回収の経過を説明する
「ピオンもがんばった!」
「えらいえらい」
シンジの頭をなでられてご満悦のピオン
シンジはビンをもってさらに奥に進む
しかし、何か思い出したのか三人を振り返ると
「今日、僕が出かけたのはレイ達には内緒だよ」
と口に人差し指を当てながら言った
「「「は〜い」」」
あきれながらも返事をする三人を確認するとシンジは再び前を向いて歩き出した










「兄さん、さいきん忙しそうね」
「うん」
ミサキの言葉にピオンが頷く
「仕方ないわよ、佳境に入ってきたんだから」
「うん!」
シャルの言葉にまたもや頷くピオン
「でも、このままじゃ体壊すんじゃ・・・」
「うん」
「だから!そうならないように私達がサポートするんでしょ!」
「うん」
そこでミサキとシャルがピオンに目線を向ける
「「・・・・・ピオン?」」
「うん?」
「意味、わかってる?」
「うん」
ミサキの言ってることにピオンは頷く
「じゃあ、どう言う意味か言ってみなさい」
「兄様と遊ぶ!」
「「おい!!」」
元気良く答えたピオンに思わずユニゾンしてつっこんでしまう二人であった
「ふぇ?」
しかし、ピオンは何もわかってはいないのである
ピオンにしてみればシンジと遊ぶ=シンジが笑う=シンジが楽しいなのである
間違ってはいないだけにそれ以上なにもいえないのであった




























<1週間後・シンジの研究室>
「・・・アダム様?」
「今はシンジだよ、ガル」
水槽の中で目覚めた青年にシンジが話しかけている
「ガル?」
「お前の新しい名前」
「はい、シンジ様」
シンジはガルに新しい世界を教えるためにガルの身体を水槽から出した
「気分はどう?」
初めて生身で触れた空気に少し戸惑うがル
シンジはそんなガルの反応が面白くてたまらないといった感じに顔をほころばせている
「・・・生きている気がします・・・これがリリンの感覚なんですね、不自由な感覚ですが、なれてしまえば大丈夫です」
「・・・・・そう(あいかわらず遠まわしな言い方を・・・)」
「これが体温というものですか・・・・・そうですね、この感覚は悪くないですね」
「そ、そう(・・・な、なんだか話が進まない)」
「・・・シンジ様、このガル、今生どのような事があってもあなたお守りします」
「・・・(ガルの育て方、間違ったかな?・・・でも育てたのってカノンとダントだったっけ)」
「シンジ様?」
「へ?・・・・あ、うん宜しく、ガル(びっくりした・・・突然話題を変えるところはカヲルそっくりだな)」
「はい」
ちょっと(かなり)思考を遠くに飛ばしていたのでガルガ何を言っていたのか良く聞いていなかったが、とりあえず頷いてみた
「・・・じゃ、じゃぁさっそくなんだけどこの世界について勉強してもらいたいんだ」
「はい!シンジ様・・・シンジ様、もう一度お会いできてうれしいですこの幸せはなにものにもかえられません」
「(・・・・昔はもうちょっとまともだったよな〜)」
ガルのしゃべり方に再び意識を遠くに飛ばすシンジであった
「(これのままで僕のシナリオうまく進むかな?)」
シンジのあとを微笑んだままついて歩いているガルをみて心底不安になるシンジであった


























<さらに、数日後・ジオフロント・某公園>
「・・・・はじめまして、惣流さん」
「あんただれ?」
数日後、アスカは公園で佇んでいた男と出会った
「私は、ガル・・・・・碇ガルです」
男はそう自己紹介をしてにっこりと笑った
アスカはそんなガルの態度に怪訝な顔をしながらもどこか、心のどこかでそれを懐かしいと感じ取っていた
「・・・・・また、お会いしましょう」
ガルはそういうとアスカの前から立ち去った
残されたアスカはしばらくぼーーーっとしていたが、そのまま首をひねって「異界」とかした我が家へと帰ることにした













<シンジの研究室>

「シンジ様、さっき惣流さんに会いました」

ブッ!!

ガルの言葉に思わず飲んでいたコーヒーを噴出してしまったシンジ
「相変わらずでした」
「そ、そう(いつのまに)」
ガルの行動の早さに感心しつつ、ここにミサキがいなくて良かったと心底思うシンジであった
「で?どうだった?」
「なにがですか?」
シンジのからかうような顔に疑問を抱きつつ聞き返す
「話したんでしょ?」
「はい自己紹介をしました」
「・・・それで?」
「ですからなにがですか?」
「その後の反応は?」
「知りません」
「は?」
「自己紹介してすぐにここに戻ってきましたから」
「・・・・・」
行動力があるのかないのかわからないガルにシンジは頭痛を覚えながらも
「ガル、ちなみに自己紹介って?」
「名前を名乗りました」
当然のことのように言うガル
「それだけ?」
「はい、他に何か?」
「・・・・・・・いや、もういい」
予想していたとはいえ、あんまりのガルにシンジは強硬手段に出ることにした

















<第三新東京市立第壱中学校2−A>
「はじめまして、碇 ガルといいます、今日からこのクラスの副担任をすることになりました宜しくお願いします」
次の日、ガルは第三新東京市立第壱中学校2−Aの副担任として再びアスカの目の前に現れた

















あとがき

今回はシンジの仕事外回り編を書いてみました
シンジだってちゃんとお仕事してるんですよvv
ネルフでは馬鹿やってても外ではこんなにまじめなんです!
さて、文中にも書きましたが、シンジは国連の作戦部特別顧問兼技術者なんですよね
いや、わたしも危うく忘れかけてましたけど
今後、国連とか、シンジの部下たちがあわただしく動くかもしれないのでちょっと出番をvv

ちなみに、エヴァの建造は4号機で終了されてます
5号機以降のエヴァはすべて破棄もしくはシンジの研究所に徴発されちゃってます
次回はアスカとガル中心のお話になる予定です




 

 

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