第十六話 悠久

 



シンジがアフリカから帰ってきてから一週間後、シンジとレイは宇宙空間、つまりサハクィエルの回収に来ていた。
しかし、賢い読者の皆様なら分かるだろう!
この二人が「二人っきりの旅行」で、回収だけで済ませるわけがなく、当初の予定の二日間という期限を無理やり一週間に延ばしてしまったのだった。
要するに、親・部下・兄弟公認の婚前旅行もどきである。


<シンジ・レイ婚前旅行一日目>
「レイ、サハクィエルはどこらへんかな?」
「・・・あそこ」
レイが指す先には月・・・・
「じゃあいこうか」
「はい」

『・・・・・で?』
目の前に突然現れたシンジとレイにサハクィエルはそういわずにはいられなかった。
当然だろう、いきなり目の前に現れて何をするかと思えば手を突き出されたっきりなにもしないのだから。
「回収するからおとなしくコアをわたして」
あまりの扱いにサハクィエルは脱力する。
『もっと、こう語り合いとかはないんですか?』
「ない!」
シンジ、即答である。
『・・・・(;;)』
大ダメージを受けたサハクィエルはそのままおとなしくシンジにコアを渡した。

「帰ろうか。レイ」
「はい」

一日目は予定通りサハクィエルの回収についやした。



<シンジ・レイ婚前旅行二日目>
その日の朝、シンジは幸せの絶頂にいた。
目が覚めると傍でまだ寝ているレイ、いつもなら邪魔してくる兄弟たちもいない、まさに二人っきり!!
これを喜ばずに何を喜べばいいんだってなぐらいに幸せなのだ!
シンジはしばらくレイの寝顔を楽しんだ後そっと起き上がり、朝食の準備をはじめた。

室内にいい匂いが広がり始めたときめをこすりながらレイが起きてきた。
「シンジ君?」
「ああ、おはよう、レイ」
二人っきりで食べる久しぶりの食事。
どこか物足りない気もするがそれでも二人は思いっきりその時間を楽しんだ。

「レイ、どこに行きたい?太陽系の中ならどこでもいいよ」
シンジは自作のシャトルの制御室に入るとレイに問いかける。
しかし、皆様なら分かっているだろうが、レイの答えはただ一つ
「シンジ君と一緒ならどこでもいい」
である。
結局、地球の軌道に乗せるとそのまま自動操縦にしてシンジはレイとくつろぐことに決めた。

「はい、あ〜ん」
「あ〜〜ん・・・・・おいしい(もぐもぐ)」
「そう?よかった」
「・・・あ〜ん」
「あ〜ん・・・・おいしいよ。れい」
新婚でもあんまりやらんだろうてな食べさせあいっこをしている二人・・・
しかも!レイはシンジの膝に横座りしているし!シンジはシンジでそんなレイが落ちないように腰をしっかりと抱きこんでいる!!
二人から出されるラブ2光線(死語)はその部屋の温度を二度あげたらしい・・・


「レイ、夕食は何が食べたい?」
「・・・レバニラ炒め、レバー抜き」
「了解(それってもうレバニラ炒めじゃないよ・・・)」
レイのリクエストに答えるべくシンジは手際よく調理をすすめていく。
「・・・・(シンジ君が私のためにだけ料理を作ってくれる。これは嬉しいこと・・・)」
そんなシンジの姿を幸せそうに見つめるレイ。

しかし二人は知らないのだ。
ユイとナオコの手によってシャトルには監視カメラが取り付けられていることを・・・



<シンジの研究室>
「はぁ〜〜なぜそこで押し倒さないの!」
「レイ!この際あなたからでいいから押し倒しなさい!!」
親ばか二人を食い入るように見ながら叫んでいる。
「いいかげんにしてください!!」
ごす!!
「「いた〜〜い」」
ユイとナオコは、どつかれた頭をおさえて振り返る。
そこには呆れ顔・・・・というより怒りを通り越したダリアが立っていた。
「まったく!仮にも親でしょう!せめて静かに見守るぐらいのことは出来ないんですか!!」
(『仮にも』とはひどいのではないだろうか?)
エラがそんなことをふと思ったが、こんなのぞき映像を受信させられているのであえて何も言わない。
「あら!親だからこそこうして見守ってるんじゃない!!」
「そうよ私たちはあの子達の保護者なんですからね」
(親がのぞきかい!!)
思わずつっこみを(心の中で)入れるエラ。
「だから、静かに見守ってください!」
(止めないのか?!)
「「ブ〜〜〜〜」」
「『ブ〜〜』じゃありません!作業に参加しないのならみんなの邪魔になるようなことはしないでください」
「「は〜〜い」」
ユイたちはモニターに向き直ると今度は小声でモニターの中の二人にちゃちを入れている。
(・・・・誰か止めて・・(;;))
エラの心の叫びにきづくものはいなかった(というよりみんなあえてきづかない振りをしているのでは?)



<シンジ・レイ婚前旅行五日目>
「あ〜そこそこ・・・」
「ここ?」
「そうそう」
レイの膝枕で耳掻きをしてもらっているシンジ。
「ん〜〜〜、レイの膝は気持ちいいよね」
「(ぽっ)なにを言うのよ」
口ではそういいながらひどく嬉しそうなレイ、それを見てご満悦なシンジであった。


「はい、シンジ君」
「ありがとう」
今ではすっかり常連になった香水専門店で貰ってきた紅茶を優雅に飲んでいる二人。
(え?何で香水専門店で紅茶が出てくるのかって?それは「想い遥かに第五話」をよんでねvv)
「なんかこうしてゆったりしてられるのも後二日と思うとな〜」
シンジがポツリと呟く。
「・・・でも、みんなに会えるわ」
「あ〜それはそうなんだけど。やっぱりみんなといるとこうしてレイと二人っきりてあんま無いじゃないか・・・だから」
シンジはレイの手に唇を落とす。
「今、この時間を有意義につかいたいな(^^)」
「・・・・?」
にっこりと笑うシンジにレイはわけがわからないという顔をする。
「今は有意義じゃないの?」
「まさか!レイといるだけでも十分有意義だけど・・・もっと有意義なこと」
「・・・(ぽっ)」
(なんなんだ〜〜〜〜!!!)



<シンジの研究室>
『・・・いるだけでも十分有意義だけど・・・もっと有意義なこと』
≪ザーーーーーーーーー≫
「「ああ!!」」
ユイは叫ぶとモニターをたたきだす。
その横でナオコももっていたビデオテープを置いて同じようにたたきだした。
「これからいいところなのに〜〜!!」
「エラちゃん!どうなってるの?」
『・・・太陽から発せられる電波により受信が正常に行われません』
(もちろんうそである)
「ふっそんなわけないわ!あの監視装置から送られてくるデーターは碇家所有の衛星が受信しているのよ!!」
「それに!あれは私が作ったんだから!太陽なんかに負けるわけないわ!!」
『・・・・ブツッ』
「「え??」」
エラが強制的に外部回路を遮断したらしい。
「はぁ・・・」
ダリアは本日何度目か分からないため息をついた。
エラが黙り込んでしまったため、ダリアの回ってくる仕事の量は数倍に膨れ上がっていた。



ところで、シンジたちに置いてけぼりを食らっている使徒たちはどうしているのだろうか?

「う〜〜ん、やっぱり兄さん達だけが旅行してるってのはずるいわよね」
ミサキの一言で八人は沖縄に遊びに来ていた。
なぜ沖縄か!
それはただ単に中学の修学旅行に便乗してきただけである。
はっきりいって非常に目立つ八人なのだが、本人達は一向に気にしていないようで国連軍基地の中にあるプライベートビーチでくつろいでいる。
どこぞのめがね君が知ったらさぞかしうらやましがるだろう。




<シンジ・レイ婚前旅行最終日>
ついに日本に帰らなくてはいけないときが来てシンジは少し残念そうだ。
レイのほうはそんなシンジを嬉しそうに見つめている。


「・・・・なんか忘れてるような?」
なんだったろう?とシンジは首をひねる。
レイもその横で首をひねっている。
「「・・・・・あ!」」
そう、二人はすっかり忘れていたのだ。
当初の目的であったサハクィエルのことを・・・
回収された後サハクィエルは特製のケースに収められたまま六日間孤独と耐えていた。

(・・・・アダム様、リリス様ひどいです(;;))
ケースの中ではむなしい叫びがこだましつづけていたとか・・・・


 

 

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