第十五話 恐怖の彼氏

 


<アフリカのとある場所に存在するシンジの研究所>
「・・・兄さん」
「言うな、ミサキ」
「でも・・・」
「言ったら最後だ」
「・・・・・」
シンジ達の目の前に広がるもの、それはまぎれもない研究所のはずである。
例えその外見が「○リーア○トワネ○ト」を想像してしまうよう物でもまぎれもなくシンジの研究所のはずなのである。
そのまま無言で研究室を見上げる三人にファンファーレと共にセンジュの声が聞こえてきた。
『碇博士〜〜〜〜〜〜!!』
シンジたちが声のするほうを見上げると(なぜかある)豪華なテラスからセンジュが(スピーカーを持っていないほうの)手を振っている。
「兄さん。やっぱり」
「ミサキ、頼むからそれ以上言わないでくれ」
「・・・・」
シンジはセンジュが有能な科学者であることを知っている。
例え「女装趣味」で「華美な衣装」をこよなく愛していようとも、人よりも「多少目立ちたがりや」でそのせいで「回りに迷惑」をかけていようともである。
『碇博士!そんなところに何時までいるおつもりですのん?お早く中にお入りくださいません』
「・・・そうさせてもらおうか」
シンジは深くかんがえないようにして研究所(であるはずのもの)の中に足を踏み入れた。
ミサキたちもそれにならう。
が、シンジは一歩足を踏み入れたところで進行方向を180度変更した。
その原因は決して入ったとたんに目に入った「謎の物体X」のせいではないはずである。
なのごとかと思いながらもミサキたちは顔を上げる。
「「・・・・」」
二人はシンジと同じように進行方向を変えた。
それは二人が見た「長くてうねっているどう見ても生命体に見えない」もののせいでは決してない。
「早くマトリエルを回収しないとね」
「そうね。早く行きましょう」
「そういたしましょう」
そう!きっと自分たちを待っているであろう兄弟と一刻も早く再会したいからに他ならないからである!
「「「ひ!!!」」」
シンジたちが歩き出した進行方向をさえぎるように「紫色の巨大な物体」が道をふさいでいた。
『まぁ!ジェニーちゃんも碇博士を歓迎してるみたいですわん』
ジェニーちゃんと呼ばれたものに追い込まれるように研究所の中に押し込まれていく三人。
(た、助けて・・・)
(やっぱりこなきゃよかった〜〜〜)
(ダント、貴方を一人にする私を許して・・・)
後ずさりながら三人は死ぬ覚悟を決めたようだ。
シンジたちが覚悟を決めて振り返った瞬間「カパ〜〜〜〜」と口をあけてシンジ達を待ち構えている「黒い塊」の口に吸い込まれていった。

「想い遥かに」END

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








・・・・・・・・じゃな〜〜〜い!!!

何とかそこから脱出をした三人の前にセンジュが現れた。
「まぁ!ミカちゃんだめじゃない。お昼ご飯ならさっき食べたでしょん?」
(昼ご飯!?私たち食べられるところだったの!!)
(ていうか!ミカってなんだよ!)
(私を食べても栄養にはなりません!!)
(お昼ぐらいケチらないでよ!!!)
(そういえば、さっきのはジェニーって・・・)
(はっそれともこれは肉食?それでしたら・・・・)
三人は相当混乱しているらしかった。


ところ変わってセンジュの執務室。
「先ほどは失礼しましたわん」
「・・・いや、とても貴重な体験をさせてもらった」
「そうね、まさか食べられるとは思わなかったわ」
「まぁ、喜んでいただいて光栄ですわん」
(((喜んでない!!!!!)))
「君はいつもああいうのを放し飼いにしているのかい?」
「まぁ!そんなことありませんわん。今日は碇博士がいらっしゃるので特別に研究所の外に出しましたのよん」
「・・・つまり、研究所の中には常に徘徊している・・・と?」
「もちろんですわん。私のかわいい子供達が悪さをするわけありませんものん」
(((食べられかけたけどね)))
「研究員はなんていってるんだい?」
「あら、何も言ってませんわよん?」
「へ、へぇ〜〜」
「でも、あんまり部屋から出ませんわねん」
(((やっぱり)))

「・・・ところで、マトリエルのことなんだけど」
「もちろん資料はそろっております」
突然センジュの口調と顔つきが変わる。
「それを見ていただければお分かりになるようにマトリエルと思われる使徒はここより6000km離れたところに存在しています」
「現在の状況は?」
「はい。使徒の位置するところより50km離れたところにキャンプを張って監視を続けています。ですが、今のところ特に変化は見られません」
「そうか、ではそこの・・・キャンプのところでかまわないから案内してくれ」
「了解です」
センジュはそういうと「パンパン」と手を打った。
すると窓の外に「エイに似た物体」が姿を現した。
「さ、お乗りになってん」
「それは?」
シンジが恐る恐る聞いてみる。
「私の移動用ペット「フェイ」ですわん」
「「「・・・」」」
もはや何も言う気力のない三人であった。




一時間後、脅威の速さでシンジ達はキャンプ地に着いていた。
「「「・・・・・」」」
ミサキを抱えるような形でシンジはフェイから降りる。
カノンは倒れこむような形でシンジの背中にもたれかかっている。
「・・・センジュ、君は何時もこれに乗ってるわけ?」
「もちろんですわん」
「そ、そう」
シンジは深くかんがえないようにした。
しかし、そののちフェイはミサキによって「暴走ミサト」というあだ名をつけられることになった。


シンジはキャンプの中に(何とか)入りわたされたファイルを読む。
「・・・・で?」
「はい?」
シンジがファイルから顔を上げて唐突に言ってくるのでどうやら質問の内容をセンジュは理解できないでいた。
「マトリエルはどんな感じなわけ?」
「どんな感じといいますと?」
「・・・君から見てどういう状態にあると思う?」
「さなぎでしょうか・・・」
センジュが首をかしげながら言う。
「つまり、さなぎ状態で地下深くにいるマトリエルの真上にキャンプをはったわけかい?」
「はい!」
「・・・・」
どうもセンジュの感性というか、テンポについていけないシンジであった。
「ま、まぁ早速回収をはじめるから各方面に通達を出しておいてくれ」
「了解です」


「碇博士、回収には私も立ち合わせていただけませんか?」
「・・・・いや、マトリエルはデリケートだからぼく達だけで行くよ」
「そうですか、残念です」
シンジはそのときセンジュの後ろに「あ〜あ、せっかくの実験・・・もといペットになる器が手に入ると思ったのに〜」
というセリフを見た気がしたがきっと気のせいであろう。


シンジ達は何とかセンジュを押さえ込んでマトリエルのいる空間に続くエレベーターの中にいた。
「あんな人が来たらマトリエルが恐がって逃げちゃうわ!」
ミサキはこぶしを握って力説する。
「ど〜してあんな人に研究所を任せるのよ!」
「いや、センジュは研究者としては本当に優秀なんだよ」
「優秀ならいいってもんじゃない!!」
「ははははは(いえない、あれでもダリアと仲がいいなんて、そのせいでいつのまにか出世してたなんて絶対にいえない)」
シンジは乾いた笑いと共に話をそらすことにした。
「ところで、何でマトリエルはまださなぎ状態なんだろうね?」
『お答えしましょう!』
「「「わ!!!」」」
突然エレベーターの中に紅い球体が現れた。
『あの女の方が恐いからです!』
「マ、マトリエル・・・・・」
「びっくりした・・・・・・・」
「・・・・(ドキドキ)」
突然現れたマトリエルにマジで驚く三人。
「ど、どうしてここにいるの?」
『さなぎ状態から抜けてきたんです』
涙ながらに(?)訴えてくるマトリエルは確かにコアから抜け出した状態だった。
「なんで?」
『もしあのまま孵化して地上に出たら・・・・・』
「「「・・・・(確かに!)」」」
シンジ達は無言で頷いてしまった。
しかし、シンジはここで訂正しなければいけないものを一つ見つけてしまった。
「・・・マトリエル残念だけどセンジュは男だよ」
『・・・・・変態?』
もっともな意見だ!
マトリエルはどうやらセンジュを変態と決め付けたらしい。
『早くここから連れ出してください!』
「いや、そのために来たんだけど」
『私、このままでは変態さんに何をされるか!!』
助けてくださいというマトリエルを見てシンジたちはため息をついてしまった。
あながちありえないことではないからだ。
「と、とにかく回収しましょう」
「マトリエル・・・」
『はい』
マトリエルはシンジの手の中に収まると安心したような波動をだす。


「・・・・(――メ)」
ふと、ミサキはマトリエルを大事に包み込むシンジを見て機嫌が悪くなる。
「・・・・・(私のことはあんな扱いだったのに!)」
あんな扱いとは、突然ATフィールドで囲まれて、挙句の果てに無理やり縮められたという扱いである。
ミサキはシンジの背中に思いっきり蹴りを入れる。
「おう!!!」
「・・・・(――メ)」
シンジはエレベーターの床に突っ伏す。
「何嫉妬してるんですか」
カノンがあきれたように言う。
「だって〜〜〜」
ミサキはシンジの上にのっかてカノンを見上げる。
「兄さん私のことはあんなふうにぞんざいな回収の仕方だったのに〜〜!」
どう見てもミサキのわがままであるがカノンは黙って聞いている。
「他の兄弟にしたって兄さん兄さんて!!」
「・・・(それはミサキなんじゃ)」
「姉さんを除けば兄さんを一番よくわかってるのは私なのに!」
「・・・(はぁ)」
「兄さんの支えになりたいのに〜〜〜〜〜」
「それは大丈夫です」
黙っていたカノンが口を開く。
「兄さんはミサキを何だかんだいって頼ってますよ。私たちから見てもミサキがうらやましくなるくらいに・・・」
「そうかな?」
「姉さんもミサキには嫉妬してるんじゃないかしら?昔から」
「う〜〜〜〜〜〜」
カノンはミサキの頭をなでる。



地上に出たシンジ達を待っていたのは恐ろしい光景だった。
「「「・・・・・・」」」
「碇博士〜!お帰りなさいませんvv」
「・・・これは?」
シンジは意を決して聞いてみる。
シンジの指差した先には・・・・・
研究員を追いかけている「謎の物体の群れ」。
「なんだか、私の後をつけてきたみたいなんですのん」
おほほと笑っているセンジュ。
「そんなことより、回収はおすみになりましたのん?」
「ああ」
「じゃああのさなぎ!私が貰ってもいいですのん?」
シンジは考える。
「(もしセンジュにあれをわたしたら今より強大な生物が作れる・・・・・しかし、あんなものや、こんなものを作るセンジュにわたしたら・・・世界が滅びるんじゃないか?)いや、あれはネルフで引き取るよ」
「えええええ!!」
センジュは思いっきり反論する。
「だだだ、だってたまにはネルフになんか活躍の場を与えないとね・・・・」
「う〜〜〜〜〜〜〜」
シンジがどもっているのも大量の汗をかいているのもセンジュに悪いと思っているからであって、センジュの後ろにいる謎の生物達がいっせいにシンジを見たせいでは決してない。
シンジは後ろにいるミサキたちをかばいながら一歩ずつ後ず去る。
「センジュ、それじゃあ僕たちはそろそろ帰らないといけないし・・・」
「もうですのん?」
それならばと、センジュは手を叩いてフェイを呼び寄せる。
「さ、お乗りになってん」
「「「歩いて帰る!!!」」」
シンジ達はいっせいに首を振る。
「あらん?ここから研究所までは一日はかかりますわよん?」
いや、それどころじゃないと思うが・・・
「じゃあ、ジープで帰るわ!」
「残念ですわん。ジープ今一台もないんですのん」
「なんで?」
「あの子達が食べちゃいましたのん」
センジュはにっこり笑って謎の生物軍団を指差す。
「「「(何食??)」」」
「他の車!」
シンジが気を取り直して言う。
「・・・・他に車なんてないですわん」
センジュがあたりを見渡して言う。
どうやら早々にきりをつけた(決して逃げたわけではない)研究員が乗っていってしまったらしい。
「ヘリを呼ぼう」
さらに気を取り直して言うが
「碇博士、ここいったいは不可思議な電磁波のせいでヘリは来れないんですのん」
シンジがとっさにその原因がセンジュなのではないかと疑ってしまったが、部下おもいなシンジはすぐさまその考えを否定する。
(決して言うのが恐かったからではない)




結局、フェイで帰ってきたシンジたちがそのまま倒れるようにあてがわれた寝室に入っていった。
そして三人は翌日まで一歩も部屋から出なかったらしい。
翌日。やっときた迎えの飛行機にわれ先にと乗り込むシンジ達の姿をその場にいた研究員達は見なかったことにしたのは正しい判断といえるだろう。
そして、一部のものを除くすべてのものが飛び去っていく飛行機をいつまでも見つづけていたらしい。



ネルフに帰ってきたシンジをレイの熱い抱擁とサンダルフォンことアリアのきつ〜〜〜〜〜い仕返しが待っていたのはまた別の話である。




「さ、マスター次はここに行ってください!」
ダリアが示した場所・・・・・
「空中?」
レイがさりげない突込みをする。
しかし、シンジにはダリアがどこを指しているのかが明確に分かってしまった。
「・・・・マジで?」
「がんばってください」
ダイアがちらつかせたチケットを見て誰もが冗談だと思った。
しかし、シンジだけは長い付き合いでそれがマジだとわかっているので本気で逃げることを考えてしまった。
だが!当然シンジには拒否権などなかったのである。

 

 

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