第十三話 Sinji(3)

 

 


カヲルが現れたころ、ネルフの地下、ターミナルドグマではユイをはじめとする数人が忙しく動いていた。
「ナオコさん、こんなもんかしら?」
「・・そうね・・・ええ、いいと思うわ」
ナオコがユイのいじっていた計器を見て頷く。
ユイはその言葉にいったん伸びをすると天井を仰いだ。
「ウ〜ン、シンジのほうはうまくいってるかしら?」
「うまく言ってるんじゃない?貴方の息子なんだし」
「そうね〜。でも、シンジってばレイちゃんのことになると人が変わるから・・・」
「そう?いつもと変わらないわよ?」
ナオコが持っているファイルから目を離すことなく聞き返してくる。
「まぁ、外見上は変わらないように見えるけどね、なんていうのかしら?こう・・・目がね、変わるのよ」
ユイはリリスの体から伸びたコードを端末につなぎデータを引き出しながら唸るようにいう。
「そう?そりゃ大切な人前にしたら変わるんじゃない?普通は」
「それとも違うのよね。なんていうのかしら・・・ああ、そうね、失ったものを遠くからみてる目っていうのかしらね」
「ふ〜〜ん、まぁ完全でないレイをそういうふうに見るのもしょうがないのかもしれないわよ」
「そうなのかしらね?」
「貴方でもわからないことがあるのね」
「分からないことだらけよ。特にあの子に関してはね。親として恥ずかしいけど」
「仕方ないわね。ロジックじゃないもの「ヒト」は」
「そうね・・・」
ユイは納得したようでどこか納得していない表情をする。
「まぁ、私はどんなことがあってもシンジの味方でいるつもりだけど」
「じゃあ大丈夫でしょ」
ナオコが言うとユイは首をかしげる。
「母は何よりも強いって言うじゃない。私たちがいうのもなんだけどね」
ナオコは自嘲気味に言うと持っていたファイルを閉じる。
「それに、わたしはあなたの息子を信じてるわよ。なんていったってかわいい娘を嫁がせるんだもの」
「そうね・・・ところで、何時の間にレイちゃんを養子にしたの?」
「戻ってきてすぐよ」
ナオコは自慢げに言う。
「さすがに行動が早いわね」
「まぁ、天才の特権よ」
「そうね」
こともなげに自慢するナオコにユイもまた当然のように答えている。

二人の会話を黙って聞いているダリアは深いため息をついた。
(なんておき楽な・・・。まぁ、マスターに限って万が一なんてことはありえないでしょうが、リリスにいたっては万が一なんて起こりえないなんて言えるわけないですわ!
・・・それにしても、あれだけしゃべりながら手を動かすスピードが変わらないところがさすがというところですね)
ダリアがそんなことを考えている間にも二人の話は盛り上がっていく。
どうやらいつのまにかシンジ達のことではなくゲンドウの悪口になっているようだ。
(・・・悪口になるとスピードが上がるものなのかしら?)
ダリアは二人の作業スピードが上がっているのに気がついて首をひねった。
(まぁ、馬鹿指令が何と言われようとわたしに関係ないわね)
ダリアはそう結論付けると自分の作業に専念した。

<シンジの研究室>
「とにかく、今母さん達が下で準備を進めてるから僕としては一刻も早くレイの覚醒をしたいんだ」
「今すぐ、ですの?」
「そう!思い立ったが吉日って言うじゃないか」
「・・・それ、いつかどこかで聞いた気がしますわ」
ルーアが眉をひそめて記憶をたどり始める。




神との対決が何時起きてもいいようにアダムをはじめとする兄弟は全員アダムの宮殿に集まっていた。
宮殿の広間でアダムは悩んでいた。
神にああいった以上神との対決は避けられないだろう、その上で、兄弟に被害が一番少ない方法を考えているのだ。
(やはりここはエヴァの妊娠中に一気に奇襲をかけるか・・いや、罪のない命を危険にさらすのは・・・だがそうなると・・どうしたものかな)
落ち着きなくうろつくアダムをリリスとサキエルは懐かしげに見つめる。
その他の兄弟は呆然と見つめてはいるが、二人にとってアダムのそんな姿は懐かしいものだった。
今でこそ、落ち着きがあって常に余裕があって堂々としているアダムだが、シャムシェルが生まれたときは今のようにどこか落ち着きなくリリスの部屋の前をうろついていたのだった。
ちなみにサキエルが生まれたときはさらに落ち着きなくうろついていたがサキエルは当然知らない。
どうやら思考のループに落ちてしまったらしい兄をそこから助けるためにサキエルは一応声をかけてみる。
「兄さん」
しかしアダムはその声が聞こえていないようである。
「兄さん!」
サキエルが声をあれげていうがやはりアダムの耳には入っていないようである。
サキエルはため息をつくとリリスに視線を向ける。
リリスは頷くとアダムの傍に近寄ろうとする。
「!!」
リリスが動く気配にアダムは顔を上げてリリスを見つめた。
「「・・・」」
二人の間に沈黙が流れる。
「「・・・」」
動こうとしない二人にサキエルがため息をついて、口を開いた。
「兄さん、考えがまとまらないのだったら私たちに相談して欲しいわ。兄弟なんだし、兄さん一人に抱え込んで欲しくないの」
アダムはしばし考えると「そうだね」といって改めて全員の顔を見渡した。
「そうだな。みんなはどうしたい?」
「エヴァを殺す」
サキエルが即答する。
「そんな!エヴァだって神に利用されてるだけかもしれない」
バルティエルがすかさず弁護する。
「何?あんな女の肩もつき?」
「そうじゃないが・・・」
「じゃあ、決まりじゃない!全てはあの女が現れてから私たちはおかしくなったのよ!貴方が物心ついたときにはもうあの女がいたからわからないかもしれないけど・・・」
「サキエル」
何時にないサキエルの取り乱し様にラミエルが戸惑いながらサキエルをおさえる。
「・・・私は許さないわ。あの女だけは・・・絶対に!!」
サキエルはそういうとアダムに後を託すように視線を向ける。
「・・・そうだな、サキエルの言い分もバルティエルの言い分ももっともだ。だが、私としてはサキエルに賛成だ」
「・・・バルティエル、文句はないですわね?」
「・・・はい」
「バルティエル、貴方はやさしすぎるんです。そして、何も知らなさ過ぎる」
「そうだな・・・バルティエルが生まれてまもなくだったな、あの女が神からアダム様に与えられたのは」
「そうね、あの女がどんなことをしたのかは知らなくてもしょうがないわね」
「・・・エヴァ、姉様いじめた・・ガキエル、エヴァ許さない」
いつも無邪気なガキエルが言うとさすがにバルティエルも黙らざるえなかった。
「で?何時殺すんですか?」
「・・・罪のない命を危険にさらしたくはないな」
「・・・・・」
「ふぅ、よく分からないけど「思い立ったが吉日」っていうじゃないか。すぐにでも実行したらどうだい?」
「はぁ!?」
突然のダブリスのそんなセリフに全員が行動を止めた。
「神は何時だって僕たちを殺せるんだろ?だったら先手必勝だと思うね」
「はぁ・・?」
ダブリスは当然のように言っている。
「・・・・(はぁ、連れてくるんじゃなかった)」
ダブリスのそんな様子をバルティエルは頭を抱えながら眺めていた。




<ターミナルドグマ>
「反対反対反対〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
まさに絶叫というような声が響き渡っていた。
「ミサキ、まだそんなこと言って」
シンジは軽く頭をおさえながらもはや慣れてしまったミサキの絶叫にあきれた声で返す。
「ずぇったいに反対!!」
「・・・はぁ」
シンジ達は疲れた顔をしてミサキを見つめる。
「分からないね、なぜそんなことをいうんだい?リリスの覚醒によって多くの兄弟が救われるんだ。これ以上の得策はないと思うね」
「そういう問題じゃない!私が言いたいのは!・・・」
「・・・てい」
ミサキが再びまくし立てようとしたところにルーアがみぞおちに(結構強めに)手刀を入れた。
「・・ごめんね。・・・さ、今のうちに覚醒を」
ルーアはミサキを支えるとシンジに覚醒を促した。
「・・・え!ああ、そうだね、じゃあレイ、準備はいい?」
「・・・・(こくん)」
少し緊張しているらしいレイの緊張をほぐそうとしてシンジはレイを抱きしめる。
「大丈夫だよレイ。僕が傍にいるんだし、絶対暴走なんてしないよ」
「でも・・・」
「じゃあ、おまじない」
「おまじない?」
「そう・・・(ほっぺたにチュv)」
「(ぽっ)」
「これでもう大丈夫だよ」
「・・・はい」
シンジたちがそんなふうにいちゃついてる間にも当然作業準備は進んでいる。
当然優秀な彼らにかかれば準備なんてすぐに終わってしまう。
それでもまだいちゃついてるシンジたちにあきれながらも二人を見ている。
『マスターそろそろ実行に移していただきたいのですが』
エラがわざとらしいほど事務的にいうとシンジは「はっ」と思い出したようにレイを離した。
レイは残念そうにシンジの腕を離す。
「レイ、がんばってね」
シンジはそういうとみんなに指示を出し始める。

しばらくしてシンジは身体を宙に浮かばせた。
とたんにLCLの水面が波立つ。
シンジはレイに手を伸ばし体を支えるとそのまま高く浮かび上がる。
「レイ、リリスと心を合わせて」
シンジがいうとレイは目をつぶりリリスに意識を向ける。


一つになりましょう
(だれ?)
私は貴方
(わたし・・・)
そう
(ひとつになりたいの?)
ええ
(どうして?)
シンジ君がそういうから
(あのひとのため?)
そう
(それじゃくりかえしになる)
くりかえし?
(そう、とおいむかしのくりかえし)
・・・・・・
(だから、ひとつにならない)
どうして?
(あのかたのおもいどおりにしたくはないから)
あの方?
(そう、わたしたちのそうぞうしゅ)
・・・・・・
(かんがえて)
何を?
(じぶんのこころ)
心?
(そう、たましいのいのり)
・・・・シンジ君と一緒に居たい
(どうして?)
わからない
(なぜ?)
わからない
(そばにいたいの?)
傍に居たい
(つらいおもいをするわ)
それでも、傍に居たい
(つらいことをおもいだすわ)
それでも良い
(こわれてしまうかもしれない)
何が?
(すべてが・・・あなたが、せかいが、そしてあのひとが)
だめ!
(こわれるかもしれない)
そんなことさせない
(こわれるかもしれない)
私はシンジ君を守る
(こわれるかもしれない)
絶対に壊れない
(こわれるかもしれない)
誰にも、私の居場所を壊させたりしない
(・・・ぜったい?)
絶対
(そう)
・・・・・一つになりましょう
(・・・おかえりなさい)
ただいま


リリスが一瞬にしてLCLへと代わり落ちていく。
そこいた全員がレイを、そしてシンジを見上げる。
シンジはレイを大事そうに抱き直すとそのまま下へと降りてくる。
シンジの表情から成功したことを感じ取り歓声が上がる。
「お疲れ様、レイ」
シンジは眠っているレイの額にキスをするとレイをダリアに預けた。
「レイを頼む」
「はい」
ダリアはレイを受け取るとそのままターミナルドグマを立ち去る。
「兄様」
ピオンが心配そうにシンジの白衣を引っ張る。
「姉様、大丈夫?」
「大丈夫だよ、まだ力が安定しなくて眠ってるだけだから」
シンジは安心させるようにピオンの頭をなでる。
「問題はこれから、でしょ?」
目が覚めたらしいミサキが静かに言う。
「動き出すわ、あの方が」
「そうだね」
「どうするの?」
「・・・さぁ」
シンジはミサキをまっすぐに捉えながら言う。
「あのときのように、再び罪を犯すのもいいかもしれないね。そしてもっと深い罪を、ね」
「・・・わかったわ。・・・・・あの女はどうするの?」
「ミサキの好きにしていいよ」
「殺すかも知れないわよ」
「・・・ミサキには出来ないよ」
シンジはやさしく微笑むとミサキの頬に手を置く。
「あの時も、殺せなかっただろ」




アラボドに在る一つの宮殿にサキエルは来ていた。
「・・・・」
目の前にいるエヴァに剣を突きつける。
正解にはその腹の中にいる子に。
「こんなことして、神が黙ってると思ってるの?」
「関係ないわ」
冷たく言い放つサキエルにエヴァは背中に冷たいものが流れるのを感じた。
「これは私の独断だもの。みんなに迷惑はかけないわ!!エヴァ、覚悟!!!」
サキエルはそのままエヴァの腹に剣をつきたてた。
「・・・・なぜ逃げないの?」
寸前で剣を止めたサキエルが感情のこもらない声で尋ねる。
「激しく動けばこの子が死んでしまうかもしれない」
「・・・・・動かなければどの道死ぬのよ」
「まだ死んでないわ」
サキエルは剣を回転させてつかでエヴァの腹を打ち付ける。
「っぐ」
「・・・・目障りなのよ・・・・あんたも、その腹の子も!」
サキエルはそういうとそのまま部屋から出ていく。
残されたエヴァは打ち付けられた場所に治癒をかける。
「いや!死なないで!私の子供。私だけの子供・・・」
どこか狂ったようなその姿をもしサキエルが見ていたらエヴァに対する思いが変わったかもしれない。
しかし、サキエルはそれ以来エヴァの前に姿を現す事はなかった。

「サキエル」
「兄さん」
宮殿の出口にいたアダムがサキエルに声をかけるとサキエルはアダムにあいまいな笑みを向けた。
「出来なかった」
苦しそうに、はき捨てるようにサキエルは言葉を紡ぎだす。
「殺せなかった・・・あの女も、子供も」
「そうか」
「どうしてなのかな?逃げなかったのよ、あの女・・・私にはわからない」
サキエルはアダムの胸に飛び込むと悔しそうにしがみつく。
「・・・・リリスも、きっと同じことをしただろうね。彼女は自分を犠牲にしてでも子供を守ろうとするよ」
「姉さんも・・・・」
「それに、サキエル。私は新しい命に罪はないと思っている。新しい兄弟だ。できるなら殺したくはない」
「・・・・ごめんなさい・・・でも、わたしは」
「・・・サキエル、みんなが待ってる・・・帰ろうか」
アダムはサキエルを抱えるとそのまま歩き出した。
「兄さん!こんなことしなくて良いてば!」
「たまには良い。昔はよくしていたしな」
「もう・・・・・」
口で文句を言いながらもサキエルは久しぶりに感じたアダムの体温に身をゆだねる。
(私のすべてをかけてあなたを守りたい。・・・・・してる、アダム)



アダム達は18番目の兄弟誕生の知らせを受けると戦装束に身を包み神のいるアラボドに赴いた。
「いよいよね」
「不安か?」
「いいえ、貴方がいるもの」
「ああ、何があっても君を守るよ。リリス」
「はい」
二人は静かに視線を交し合うとそのまま玉座に続く扉を開けた。

「これは?」
アダムは扉が開いたとたんに鼻についた血の匂いに顔をしかめる。
「!!」
リリスも中の光景に絶句する。
そこにあったのは、血にまみれた二人に赤子を守るように抱きしめるエヴァとそれを愛しそうに見る神の姿だった。
「兄さん、波動を感じない」
サキエルが顔をしかめながら言うとアダムは改めて二人の赤子に意識をむける。
(どういうことだ?こんな中途半端な波動・・・・失敗したというのか?)
「アダムよ、何時までそんなところにいる。ちこうよれ。新たな兄弟の顔を良く見るといい」
神はそういうと手招きをする。
アダム達はわずかに違和感を覚えながらいわれるがままに室内に足を踏み入れた。
「かわいいであろう?」
神は赤子を指して言う。
「完璧な赤子だ。私が望むままの、完璧な」
神は愛しそうに赤子の一人をエヴァから受け取ると血で汚れるのもかまわずに抱きしめる。
「こんな中途半端な赤子が、貴方の望むものだというのですか!こんな!こんな脆弱な!壁さえはれない赤子が貴方の望むものだと!!」
アダムは神に槍を突きつける。
「我々はなんだったのですか!何のために生まれてきたというのですか!答えよ!神よ!!」
「何事にも準備が必要であろう?このものたちを地上に降ろすにしても、その準備が」
「準備・・・」
アダムは呆然と神の言葉を噛締める。
「私たちを愛しているといったのはうそなのですか」
「うそではない。今も愛しているぞ。だが、もういらぬ」
神はそういうとエヴァに赤子を再び預けそのままアダムに向かって腕を振り下ろす。
「兄さん!」
「アダム!」
リリスが動くよりも先にサキエルがアダムをかばうように前に出た。
「っぅああああああああ!!!」
「サキエル!」
神から発せられた光がサキエルの身体をつらぬいた。
「イスラフェル!治癒を!」
アダムが崩れようとするサキエルを支えながら叫ぶ。
「おろかだな。アダムならば簡単に防げただろうに。無駄なことをしたがゆえに無駄な苦しみを味わう」
「・・・っ!」
「サキエルには感謝しておるゆえ、本来ならば手を出したくはなかったのだが」
「感謝?」
「そのものがエヴァの腹を打たんかったらこの赤子は生まれていなかったからの」
「!!!」
アダムの驚愕する様に神は満足したのか笑みを深くする。
「いらぬものどもよ立ち去るが良い」
「・・・許さない」
アダムは槍をエヴァに、そして二人の赤子に向ける。
「許さない」
アダムは呪詛を歌い始めた。
「何をする!」
アダムに再び腕を下ろした神の攻撃をリリスが止めた。
「・・・・させない」
リリスを手助けするようにイスラフェル・サンダルフォン・イロウルを除いた全員が神を囲む。
残ったものはアダムのうたを押し上げるように自らも歌いだす。
「いや!やめて!!」
エヴァの狂ったような叫び声が聞こえる。
アダムの呪歌は止まることなくエヴァたちに降り注ぐ。
「やめろ!」
神はリリスたちのフィールドを砕こうと狂ったように攻撃を繰り返す。
すでに半数の使徒が倒れ残ったものも傷が深くなってきている。
「呪われろ!」
アダムが叫ぶとそのままエヴァ達を光が包む。
「いや〜〜〜〜〜〜!!」
アダム達はエヴァのその声を聞くと神の放った光に包まれて意識を手放した。



アダム達が次に目覚めたのは地上だった。
アダムとリリス以外の全員が致命的な傷を受けていた。
二人は必死に治癒を施す。
あらかた塞がったものの、力の復活には時間が必要だった。
アダム達はそのまま散らばると傷を癒すために深い眠りに入った。
リリスとアダムは全員の眠りを見届けると自分たちも眠りに入った。
再び安息を手にできると信じて・・・


しかし、幾億年の月日が流れたとき、それは破られた。
神の寵愛を受けアダムの呪いを受けたリリンの手によって。




<シンジノ研究室>
まだ眠っているレイの額にダリアは手を当てる。
「早く起きなさい、レイ。マスターには貴方が必要なのだから」
ダリアの声に反応するようにレイのまぶたが震える。
「・・・起きなさい。レイ・・・・レイ」
ダリアは何度も「レイ」と呼びかける。
ゆっくりとレイのまぶたが開いていく。
「レイ・・・おはよう」
ダリアがそういって微笑むとレイはダリアに抱きついた。
「・・・っひっく・・う・・」
「大丈夫。大丈夫よレイ」
ダリアはレイの背中をゆっくりとさすりながら子供をあやすようにいう。
「・・うっく・・・ひっく・・・・」
「大丈夫。ここにいるわ、私はずっとここにいるから」
シンジが戻ってくるまでダリアはずっとそうしてレイの背中をさすりつづけた。





A fight between the blue you once knew
Floating down, the sound resounds
Around the icy waters underground

Blinding sings flap
Stairway Scare Dan Dare
Who's there?

 

 

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