第九話 チルドレン

 



シンと静まった研究室でダリアは考えていた。
シンジの計画も順調に進んでえいるのにもかかわらず、どこか不安が浮かび上がってくる。
(なぜだろう?この不安はどうして)
ダリアはどこかうつろな目をしながら目の前にある水槽をぼんやりと眺める。

『ダリア、何を考えてるんですか?』
「エラ、貴方にも分かっているでしょう?」
『・・・計画は順調です』
「そうね、きっと気にし過ぎなんだわ」
ダリアはかぶりを振るとそのまま水槽の中にいる二体の素体のチェックをはじめる。



ネルフ司令室
ゲンドウが座っているはずのそこにはなぜかシンジが座っている。
そしていつもならば冬月が立っているはずの場所にはユイが立っている。
ユイの反対方向にはレイが無表情で立っている。
そして三人の視線の先にはネルフの作戦部長とセカンドチルドレンのアスカが立っている。
「・・・・来ないわね」
「そうだね」
シンジとユイはにっこりと笑っているが、その後ろには何かどす黒いオーラが上っているように見える。
「遅いわね」
「ほんとにね」
さらににっこりと笑っている。
「まだかしらね」
「まだみたいだね」
さらににっこりと笑っているが後ろに見えるオーラはどす黒さをましている。
「どう思う?ミーちゃん」
「どう思います?ミサトさん」
「は、あひ・・・・・・」
突然降られて言葉に詰まるミサトは先ほどから青くなっている顔をさらに青くしてしまう。
どうやらシンジ達は誰かを待っているようだ。
待ちぼうけを食らっているシンジとユイは機嫌が悪いのかミサトに先ほどからこんなことを聞いては困らせているのだ。
「レイ、今何時?」
「一時三十三分。約束から三十三分の遅れよ」
「そう、もうそんなになるんだ。よかったですねミサトさん、マナが遅刻して」
「は、ふたえぁ・・・・・」
ミサトはシンジたちとの約束に十分遅れて来たのだ、そのときはアスカにこってりと搾られたがシンジ達はそのときはまださほど機嫌は悪くなく、たいしたお咎めなかったのだが、さすがに二十分以上待たされていると機嫌も悪くなるらしい。

「マナってやついつまで待たせる気!」
アスカはユイの前だということでおとなしくしているのだがいいかげんに堪忍袋の緒が切れたようだ。
「大体!何であんたがそこに座ってんのよ!」
怒りの矛先がシンジに向かう。
「何でって言われてもね(どっかの髭がいないせいなんだけど)」
「そうね、説明は面倒くさいわね(ゲンドウさんってばどこに行っちゃったのかしら?)」
「じゃあ質問をあえてあげるわ!何でこの私がここに呼ばれなくちゃいけないのよ!!」
「チルドレンの任命式(だったと思うけど)」
「え?これからの作戦会議じゃないの??」
シンジの言葉にミサトが驚きの声を上げる。
「ミーちゃん、話はちゃんと聞かなくちゃ」
「はい・・・・」
「ちなみにシンジ、今日の集まりは任命式じゃなくて顔見せ会よ」
「あ、そうなんだ」
「どういうことです?ユイさん」
アスカはさすがにユイ相手ということで丁寧な言葉遣いになる。
「だってアスカちゃんマナちゃんに会ったことないでしょ」
ユイがにっこりと笑って言う。
そうなのである、アスカはここ数日食べすぎとミサトの無茶な運転のせいでずっと入院していたのである。
つまり、日本に来てから一週間たっているにもかかわらずマナに会ってはいないのだ。
ちなみにレイと会ったのも今日がはじめてである。


「ところで、マナって女何者よ」
「え?知らないの?」
アスカが思いついたように言うとミサトが驚いたようにアスカのほうを見る。
「知らないわよ!説明されてないもん」
「・・・フォースチルドレンよ」
そこまでしゃべらなかったレイが口を開く。
「なんですって?」
アスカにしてみれば初耳なのだろう。
「どういうこと?」
レイを睨むアスカ。
「・・・・」
答えないレイの代わりにユイが口を開く。
「アスカちゃん、JAって知ってるかしら?」
「はい」
「マナちゃんはそのパイロットとしてネルフのフォースチルドレンに就任したのよ」
「なんでよ?JAはエヴァじゃないわ!!」
アスカは相手がユイだということにもかかわらず言葉が荒くなる。
「JAはエヴァと同じ物だよ。コアは少し違うけどね、ある意味エヴァよりも高性能かもね」
「なんですって!」
「JAはシンジ君が時田博士に協力して作ったもの」
「・・・どういうこと」
アスカはシンジの目の前にあるテーブルを思いっきりたたきつける。
アスカにしてみれば、唯一のよりどころであるエヴァをそう簡単に作られては困るのだ。
しかし、シンジ達はさほど気にしてはいない。
むしろ協力的といっても良いだろう。
「聞いた通りよアスカちゃん。さて、お待ちかねのマナちゃんがやっと来たみたいね」
ユイがアスカの肩をたたくのと同時にマナが司令室に入ってきた。

「ごめんね~遅くなって。なんか途中であやしい髭につかまっちゃってさ~」
マナはさほど悪びれていない。
「髭・・・(あいつか)」
「それは気の毒にね(ゲンドウさん、何考えてるのかしら)」
「・・・(この場合悪いのは髭)」
「遅いわよん(碇指令、ついにマナちゃんにまで・・・)」
「!!(こいつがマナ!)」
それぞれの思考がマナに向かう。
(余談だがこの時点でユイとシンジがゲンドウに何らかのおしおきを考えていることは言わなくてもわかるだろう)
アスカはマナの前までくると仁王立ちになる。
「あんた、フォースチルドレンになったからっていい気になってんじゃないわよ!
エヴァのトップパイロットは私なんだから!足引っ張らないでよ!!」
マナは一瞬びっくりしたように目をぱちくりとさせていたがアスカが「分かった!」と念を押したところで再起動をはたす。
「よろしく。アスカさん」
アスカの言っていた事などこれっぽちも気にした様子もなくアスカに握手を求める。
「ふん!」
アスカは差し出された手を無視してミサトの横に戻る。
「あらら」
残されたマナは肩をすくめるとアスカとは反対側にたつ。

「それじゃ、一応みんな自己紹介をしましょうか」
ユイが言うと最初にマナが手を挙げる。
「まあまあ、じゃあマナちゃんからね」
指名されるとマナは一歩前に出て咳払いを一つする。
「ゴホン。では改めまして、時田マナです!前は時田父さんのところに居たんだけどJAがネルフの所有物になったからパイロットの私もネルフにきました!!」
くるりと一回転してふざけたように敬礼をする。
シンジとユイが拍手をしているのでつられてレイをミサトも拍手をする。
アスカだけはそっぽを向いている。
「じゃあ次はアスカちゃんね」
「はい!惣流・アスカ・ラングレイよ!!あたしが来たからにはあんた達は用無しよ!これからは私の邪魔をしないようにしなさい!!」
あくまでも命令口調である。
苦笑しながら拍手をしてユイはレイを見る。
「レイちゃん」
「はい。綾波レイです」
簡単な挨拶である。
「それだけ?」
「・・・シンジ君の恋人です(ぽっ)」
うんうんとうなずくシンジとユイ、さすがに慣れたのか大して反応をしないマナとミサト。
アスカだけは驚いているようだがこの際誰も気にはしていない。
拍手をするとシンジは立ち上がる。
「最後はシンジね」
ユイが促すとシンジは待ってましたというように口を開く。
「碇シンジ。サードチルドレン、技術部第二課長、国連特別顧問、国連技術者とか色々肩書きがあるけど気軽に付き合って欲しいな」
アスカ以外全員が知っている肩書きを披露する。
アスカは言葉もでないほど驚いているようで口をパクパクさせている。

「みんな自己紹介は済んだわね。じゃあこれからどうしましょうか?」
「あ、僕はこれから研究室の戻るから、レイ、行こうか」
シンジはマナに手を振りながら司令室をレイと一緒に出て行く。
「シンジってば相変わらずレイとラブラブなのね」
マナが呆れたように言うとユイがにっこりと微笑んでいる。
「そうね~あの子達はね~」
「もうどうにでもなれって感じね」
ミサトもため息をつきながらユイに同意する。
「で、みんなのこの後の予定は?」
「私はこの後シンクロテストがありますから、これで失礼します」
アスカはそう言うときびすを返して司令室を出て行こうとする。
「待ってよ!アスカさん」
「何よ!邪魔しないで!」
アスカはつかまれた腕をうるさそうに振り払おうとした。
「・・・・」
なぜ「した」なのかというと、いくら加持から戦闘訓練を受けているアスカとはいえ、戦自で訓練を受け、さらに時田に引き取られてからも訓練をつんできたマナにかなうわけがなかったのである。
「私もテストがあるの。いっしょに行きましょ」
マナは言うが早いかアスカを引きずって司令室を出て行く。
「いってらっしゃ」
ユイはニコニコしながら二人を見送っている。
「あ〜〜〜!!私も行かなくちゃ!ユイさん失礼します」
ミサトは思い出したかのように言うと慌てて司令室を出て行った。


「みんな行っちゃってつまんないわね」
一人残されたユイがほっぺたを膨らませながらすねていた。
とても一児の母(いや、すでに六児の母か)には見えない。
「・・・ところで、本当にゲンドウさん何してるのかしら?」
ほんとに何をしているのだろう?
(ちょっと覗いてみますか)
ユイは端末を引き出すと何か操作し始める。

『碇、いいかげんにしろ!』
『どうせ私はいらない指令なんだ』
『まったく、私はもう行くぞ』
『待て!冬月!私を置いていかないでくれ!』
『え〜い!はなさんか!』
『冬月先生〜〜〜〜(;;)』

「・・・・・・(くだらない)」
ユイは端末をしまうとため息をつく。
本当にどうしようもない指令である。



シンジの研究室
「兄様、兄様!ピオンかわいい?」
シンジの周りをくるくると回りながらピオンがはしゃいでいる。
どうやら新しい体がよっぽど気に入っているようだ。
その身体というのがシンジと同じ、黒い髪に黒い瞳、そして外見年齢二歳というどうしようもないくらいかわいらしいのだ。
「かわいい、かわいい。でもあんまりはしゃぐとこけるよ」
シンジはピオンを抱き上げるとあやすように頭をなでる。
それを見たレイとミサキがほっぺたを膨らませているのはご愛嬌ということで。
「ピオン、兄さんの邪魔になるからこっちにきなさい」
ミサキがピオンをシンジの腕から引き離そうとするがピオンはシンジの首にしがみついてはなれようとしない。
「や〜〜〜〜〜!ピオン、兄様といる〜〜〜!!」
「は〜な〜れ〜な〜さ〜い〜」
「二人とも苦しいんですけど・・・」
シンジは(二人の身長の関係上)前かがみになりながら困ったように言う。
「離れなさい!ピオン!!」
「や〜〜〜〜〜〜!!」
「シンジ君・・・」
レイは二人の攻防に参加したくても、シンジが苦しがっているのでそれが出来ずに、かなり挙動不審な状態でシンジを見つめている。
「今日も平和ね」
『ほんとに』
ダリアたちはそんな光景をあきれながら見ている。

「それにしても、そろそろじゃなかったかしら?」
『予定で行けばあと二時間後です。それまでに終わってくれるといいんですが・・・』
そう、後二時間もすれば第七使徒が現れるのである。
「いいかげん離れなさい!」
「や〜〜〜〜!!」
「く、首が・・・・・」
「シンジ君・・・死んではだめ」
いまだにシンジの取り合いを続けている大ボケ兄弟にダリアや研究員達はため息をついた。



ネルフ第二実験場
「アスカ、調子悪いですね」
「そうね(やっぱり強制的にコアを戻したのがいけないのかしら?)」
マヤが首をかしげながらいった言葉にかなり動揺するリツコ(表面上はそうは見えないが・・・)
「まあ、昨日まで入院していたのだし、大目にみましょう(そうよ!みんなミサトがいけないんだわ)」
「はい(先輩ってばやさしい)」
リツコはミサトに責任を押し付けることに決定したらしい。
そうとは知らずにリツコを改めて尊敬するマヤがなんと言うか・・・
「・・・リツコ、何で睨んでるの〜(;;)」
ミサトはわけのわからないままリツコの「氷の視線」を受けて固まっている。
「でも、マナちゃんは安定してますね」
「そうね、JAはいったいどういう構造をしてるのかしら、興味深いわ〜〜」
時田によって作られたJAは基本的にはエヴァとかわらないが、シンジのアイディアによりコアに人間の魂ではなく、シンジの造った防衛本能のデータが入っている。
そのため、エヴァよりパイロットの操縦技術が求められている。
おちゃらけて見えるが、マナも相当な技術者といえるだろう。


ビービービービー

「何事!」
突然の警報にミサトが厳しい顔つきになる。
「パターン青!使徒です!!」
「実験中止」
とたんに慌しくなる実験場。

『チャ〜ンス』
モニターにはにやりと笑うアスカが映し出される。
『ミサト、私が出るわ!』
『あ、じゃあ私もでま〜す』
アスカが言うとマナもモニターの中で手を上げていう。
『何であんたまで!私だけで十分よ!』
『え〜、一人よりは二人でよ〜』
モニター越しに言い合いになる二人。
「分かったわ、アスカ、マナ出撃よ」
ミサトは頭を抱えながらそう言い放つ。
『え〜〜〜〜!!』
『は〜〜い!がんばります!』
ぶつぶつ文句をいうアスカと張り切っているマナがイスラフェルに撃墜されるのはそれから三十分後である。



『本日1458時16秒、第七使徒が2体に分裂。以降、使徒Aおよび使徒Bと呼称します』
シンジが進行をする中、正面スクリーンに映し出されている、先の戦闘の経過。
発令所では対第七使徒戦の反省会が行われていた。
この場にいるのは司令、副司令そしてユイ、チルドレン四人、作戦部長、技術部長、諜報部長、メインオペレーター3人。
『同32秒、使徒AとBの連携攻撃により弐号機が中破、沈黙』
使徒に殴り倒されて砂浜に埋まる様子が映し出されている。
『JAがこれを回収、後送。その過程で兵装ビルが大破』
弐号機の足を掴んで放り投げるJAと、それを受け止めて崩れ去った兵装ビルが映し出される。
『1500時、JAが単独で戦闘に入りましたが――』
2体の使徒を同時に相手にするJA。
精確な打撃でダメージを加えるが、
『使徒AおよびBの、驚異的な回復能力が発現』
どれだけの損傷を与えても、使徒の身体は瞬時に回復していく。体組織だけでなく、コアも同様だった。
『現時点での殲滅は不可能と判断されました。1503時、戦略自衛隊に指揮権を委譲。N2による爆撃が行われました』
沿岸域への被害を抑えるため、使徒を両手に掴んだまま沖にジャンプするJA。
そしてN2爆雷が投下され、閃光がスクリーンを漂白する。
『この攻撃により、使徒の体組織の49.65%の焼却に成功。そして――』
いったん言葉を切り、すぐに続ける。
『巻き込まれたJAも中破。・・・・・・マナ、頼むからあんまりJAを壊さないでくれ、先生に怒られるのは僕なんだから』
「あはは、ごめ〜ん」
さほど気にした様子もなくマナが謝る。
『まったく・・・・今回の戦闘でJA及び弐号機は今後の第七使徒戦においては使用不可能』


「葛城一尉、今後の作戦は?」
ゲンドウが重い口を開く。
「・・・・・」
ミサトは何にも思いつかずにうなだれる。
「・・・シンジ」
「・・・・・(気安く呼ぶな(――メ))」
「作戦はないのか?(シンジ、そんな目で見ないでくれ(;;))」
「あることはある(役立たずな作戦部長よりは確実に)」
「言ってみろ(さすがはわたしの息子だ)」
「・・・ユニゾンによる同時殲滅(って行ってもほんとは回収だけど)」
「担当はおまえとレイだ(う〜んこれでパパの株UPだな)」
「当然だろ(他に誰がいる)」
シンジはレイの手を取ると自分に引き寄せる。
「良いね、レイ」
「はい」
「じゃあ母さん、リツコさん詳しい作戦を立てましょう」
「「了解」」

「ふ、問題ない。(シンジ!ユイ!私はいらない父親なのか?)これにて解散とする(待っていろ二人とも、今パパが行くからな〜)」
「碇、少しは落ち着け(ユイ君が愛想を着かすのも無理ないな)」
いそいそと出て行くゲンドウと後に続く冬月。

「じゃあ私たちは事後処理をしましょうか」
「了解」
マヤと青葉は何かを話し合いながらいくつかの書類をまとめていく。
「葛城一尉、これにサインをお願いします。それから、日向君借りますね」
マヤは日向の腕を取るとそのまま引きずって出て行く。青葉はミサトに書類を渡すと二人の後に続く。

「ちょっと待ってよ〜三人とも〜」
ミサトは日向を取り返すべく、慌てて三人を追いかけて発令所を後にする。



「・・・アスカ、気にすることはない。初めての戦闘なんだし、失敗は誰にでもあるものさ」
「・・・・・なのよ」
加持の言葉にアスカは小さな声で答える。
「あいつは・・・・・・・成功した・・・・・・・・から、だめなのよ」
「アスカ・・・・・飯でも食いに行くか」
加持はアスカの肩をたたくとそのまま方を抱いてアスカを発令所から連れ出す。
「・・・・・」
アスカは相当落ち込んでいるらしく、加持にされるがままである。
しかし、その口は何か小さく呟くように動いている。

「・・・う〜〜ん私はどうしようかな?」
マナはいったん伸びをするとほぼ無人になった発令所のモニターにいまだ映し出されている映像を見る。
「まあ、仕方ないよね。シンジじゃないんだし・・・・・・」
マナはきびすを返してアスカたちを追いかけた。



ネルフ食堂
「惣流さんは何にする?私は・・・・あ、加持さん!私これ!このランチセットがいい」
「もちろんいいよ」
加持は財布の中身を計算しながら頷く。
「アスカは何にするんだ?」
加持がアスカにいうとアスカは何でもいいといって勝手に席に着く。
「「・・・・・・」」
加持たちは顔を合わせると慌ててアスカを追いかける。

「・・・・・」
アスカはまだ口を聞くどころか運ばれてきた食事にもまったく口をつけていない。
マナは加持と楽しげにしゃべりながらもアスカをちらちらと気にしている。
加持もことあるごとにアスカにも話を振るがアスカが何もしゃべらないのでマナと会話を続けている。
「そういえば、マナちゃんは前は戦自に居たんだったね?」
「・・・はい」
マナのトーンが少し落ちる。
アスカは戦自という言葉に反応したらしく顔を上げる。
「・・・・・・いろいろあって〜(^^)父さんのところに引き取られたんですよ」
「・・・・・ほんとの親じゃないの?」
アスカがはじめてマナに話し掛ける。
「そうよ、でも私にとっては本当のお父さんよ」
マナは自慢げに時田のことを話しはじめる。
「父さんは私のほかにシンジの引き取ってたの。でもシンジはユイさんのところにいつかは戻るからって戸籍に入れらんなかったんだけど」
「あいつも?」
「そう、私は父さんに会えたのもシンジのおかげ」
「・・・」
「でね、父さんは頭がいいし、やさしいし、何よりもあったかいのよ」
「!!!!!」
マナがいうとアスカが勢いよく立ち上がる。
マナはびっくりして口を開いたまま動かないでいるとアスカはマナの胸倉を掴みマナを立ち上がらせる。
「ふざけたこと言ってんじゃないわよ!所詮は他人でしょ!奇麗事言うんじゃないわよ!!」
「!!」
バシン!!!!!
マナがアスカの顔を思いっきりぶった。
「・・・・・(やったか・・・)」
アスカはぶたれた勢いでマナから手を離すとそのまま倒れる。
「・・・それ以上何か言ったらこんなんじゃすまないわよ」
マナは殺気立って言うとアスカは圧倒されてそのまま何もいえないでいる。
「父さんは私の恩人なの。あんたに何がわかるってのよ!」
「まあまあマナちゃんも落ち着いて。アスカも言いすぎだぞ」
加持がマナを席に座らせるころにはマナも平常心を取り戻したらしくアスカを気遣う。
アスカは加持の手を振り切るとそのまま食堂を飛び出してしまった。

「アスカ!!」
加持が呼ぶが振り返らずに走っていくアスカを見送りながらマナはひどく落ち込んでいる。
「・・・・加持さん、私やりすぎちゃった」
「そうだな・・・」
「父さんにも、シンジにも言われたのに・・・・もうあのことは気にするなって」
「例の事件のことか」
「・・・・(こくん)・・・・」
マナは首を振ると顔をあげてもとの明るい表情を取り戻す。
「私惣流さんを追いかけてきます」
マナは言うが早いか食堂を出て行った。
加持はマナを見送ると自分も食堂を出て行った。



 

 

戻る