第一話  再会と出会い

 

第3使徒戦

 

初号機の作り出したATフィールドが使徒を球状に包み込んだ。

「ATフィールド?」

「初号機からATフィールド確認」

「使徒ATフィールド内にフォールドされました」

発令初では信じられないという声が響いていた。

「彼、ATフィールドを完璧に使いこなせるのかしら?」

リツコは自分でもまだよくわからないATフィールドをシンジが使いこなしているのが気に入らなかったが、後で聞けばいいと思ったのでとりあえず表面上は冷静に言った。

ちなみに作戦部長である葛城ミサトは道に迷っているためここにはいない。

 

初号機のATフィールドが徐々に縮んでいく。

「ATフィールド縮小していきます」

使徒はATフィールドに閉じ込められたまま押しつぶされていく。

「パターン消失。エネルギー反応は認められません」

『これより帰還します』

 

こうしてシンジの圧勝という形で初戦は終わった。

 

さて、各人の様子を見てみよう。

《まずじい様方》

「碇、これは俺のシナリオにはないぞ」

「ふ、問題ない(シンジ、さすがはわたしの息子)」

 

《発令所入り口》

「リツコ!使徒は?」

そういって入ってきたのは活躍の必要のなかった作戦部長であった。

「もう終わったわ」

「う、うそ」

がっくりとうなだれるミサトを尻目にリツコは司令室に向かう。

「無様ね」

もちろんきめ台詞も忘れない。

 

《自宅》

「マスターの馬鹿!勝手にいちゃついてればいいのよ」

うやむやのまま帰されたダリアがエラに愚痴っている。

『ダリアうるさい』

「だって〜!マスターひどいのよ〜!」

さっきからこの繰り返しである。

 

《シャワー室》

(サキエルの回収完了、しかしひどいよな。いきなり・・・・・・だもんな)

何かぶつぶつ言っている。

(さてこれからが大変だな、母さんがおとなしく出てきてくれるかな?)

LCLを洗い流すと私服に着替え発令所に向かう。

(ま、出てきたくなくても出てきてもらうけどね。ぼくのために)

邪悪な笑みを浮かべながら歩いていた。それを見る人がいなかったのは不幸中の幸いだろう。

 

 

 

「サードチルドレン、碇シンジです」

「入れ」

開いたドアから部屋の中を見渡すとゲンドウ、冬月、リツコがいた。

シンジにとっては予想していたことなので気にせずそのまま入る。

「いくつか質問があるわ」

そう切り出したのはリツコだった。

「その前に、父さん」

「なんだ」

リツコは質問をさせてもらえなかったのでちょっとムカッとしたが表面には出さなかった。

「条件の確認を取りたいんだ」

「・・・・」

ゲンドウは一瞬頬を引きつらせたが手が邪魔でわからない。

「「条件?」」

冬月とリツコが珍しくユニゾンした。

シンジはにっこりと微笑むと自分の出した条件を言っていった。

・ 契約金として一億。月々の給料は500万とする。

・ 残業手当は一時間につき100万、危険手当は一回の作戦につき500万とする。

・ 作戦において拒否権および、自己の考えが提示された作戦よりよいと判断した場合それを実行する。

・ 住居は本部内に設置、プライバシーの保護のためいかなる手段を用いてもネルフは関知しない。

・ 碇シンジに対して、ガードおよび監視者をつけることを許さない。

・ MAGIへのアクセス権を発行し、レベルは管理者のものと同じにする。

・ セキュリティーカードは碇ゲンドウと同等のものを用意すること。

といったものだった(重要と思われるものを抜粋)。

「最後に、ファーストチルドレンとの同居を認めること」

「「「なに〜」」」

そこまで言うと半ば呆然としていたゲンドウたちは見事なユニゾンで叫んだ。

「シンジ君それは少し倫理的に問題があるわ」

リツコの反論。二人がうなずく。

「おや、子供を使って戦闘させる人たちに倫理を語られたくありませんね」

「ヴゥ」

「しかし、年頃の男女を同じ部屋に住まわせるのは大人として認められん」

冬月の反論。またふたりがうなずく。

「年頃の女の子をあんなところに住まわせてる人たちが何を言うのです」

「う、うむ」

「同居の必要性がない」

ゲンドウの反論。二人が大きくうなずく。

「そうだな、はっきりいって誰かさんたちのせいでまともな育ち方をしていないからな、同じパイロットとしてほって置けない。それとも彼女に感情でも芽生えると何か困るのかな?皆さん」

「「「ヴヴ」」」

なおも引き下がろうとする面々にごうを煮やして、シンジはある交換条件を出す。

「では、この条件を飲んでもらう代わりといっては何ですが、父さん、冬月先生」

「「なんだ(ね)」」

「母さんのサルベージュを行います」

「「なに」」

「リツコさん」

「なに」

「エヴァに対する研究にチルドレンとして、国連付き技術者として全面的に協力しますよ」
「え!」

「さて、みなさんどうします?」

「「「・・・・」」」

(ユイ(君)が帰ってくるのなら)

(彼の技術がどのようなものかわからないけど、ATフィールドについての研究がしやすくなるわ)

「・・・・よかろう」

ゲンドウがそういったことでシンジの出した条件はすべて受理された。

(やった。さて、母さんの事は・・・まあいいか、ゲンドウとの関係がどうなっても知〜らない)

「じゃあ、早速サルベージュだね」

「うむ、赤城博士」

「はい、シンジ君ついてきて」

 

そして碇ユイのサルベージュが始まった。

 

結果。

「ゲンドウさん。許しませんよ〜!」

「ひぃ、ユ、ユイまってくれ話せばわかる・・・・ぎゃ〜〜〜」

ネルフ内を走りまわって逃げる指令と、笑顔でそれを追いかける女性の姿が目撃された。

「ぶ、無様ね」

「ユイ君、相変わらず元気だな」

「あはは、父さん自業自得だよ!」

実験室に残ったものの感想である。

シンジはどうやってユイを起こしたんだ?

「それにしても、ユイさんお怒りがわたしにこなくてよかったわ」

「母さんも父さんの浮気には黙ってられないでしょうから」

なるほど、ゲンドウの浮気をばらして起こしたのか。

「っは、シンジ君!わたしの実験に付き合ってもらうわよ〜」

「研究でしょうが!」

 

《リツコの研究室》

「なるほど、ATフィールドの構造は大体わかったわ」

薄暗い研究室の中でわけのわからん会話をしているマッドが二人。

「それで、・・・・が・・・で、・・・・なんですよ」

「なるほど、じゃあ、・・・・は?・・・・なるほど、興味深いわ〜」

二人とも人語を話してくれ〜、書けないじゃないか!

「ふふ、碇博士の科学力には感心するわね、さすがユイさんの子供だわ」

「いやだなー、リツコさんだってあのひげにつかまらなきゃこんなとこでくすぶってなかったんですから、

それでこれだけの研究量はすばらしいですよー」

マッド同士気が合ったらしい。

「リツコいる?」

そういっていきなり入ってくるのは活躍の場がなかった作戦部長である。

「ミサト、ノックぐらいしなさい。・・・まあいいわ、ミサトこちらがサードチルドレン碇シンジ博士よ」

「やだなリツコさん、シンジでいいですよ。それに敬語はいりませんよ」

「あら、そう?」

「はい、ところではじめまして葛城ミサトさん」

「あら、名前知ってるのね」

親友と、これから部下になるシンジの親しげな雰囲気を察して、なぜか逃げ腰のミサト。

「しっかし、指令とは似てないのねぇ。(かわいいわ、でも何かしらコ感じ)」

おお!本能でマッドを感じている!

「あ、ミサトシンジ君は技術部付きになるから」

「なんでよ」

「シンジ君の技術力は作戦部においておくのは惜しいからよ」

「何ですって〜〜(@□@)」

言い合いになる二人、しばらくしてリツコがシンジの経歴をミサトな話すとミサトはしぶしぶながら納得した。

正直、マッドをそばの置いておきたくなかっただけかもしれない。

『ピピ』

ディスプレイにレイが目覚めたことを示す文字がずらずらと表示された。

「シンジ君、レイが起きたそうよ」

「あれれ?シンチャ〜ン、レイが気になるの?」

ここぞとばかりにミサトがシンジをからかう体制に入る。

「はい。彼女はぼくの運命の人ですから。リツコさんじゃあ失礼します」

あっさりかわして出て行くシンジを口をあけたままで見送るミサト。

「ええ、レイとのこと、協力は惜しまないわよ」

「どうも」

前もって聞いていたのか苦笑いで見送るリツコ。

「なに?あのこ」

シンジが出て行った出口を見ながらリツコに聞くミサト、その表情はなんとも言いがたいが嫉妬に燃えている。

「すばらしいわ」

答えになってないぞ!

「さてと」

リツコがなにやらモニターを操作する

「あら、レイの病室じゃない・・・(にやり)」

 

《レイの病室の前》

(緊張するな〜、いや、さいしょがかんじんだがんばるぞ)

『コンコン』

返事がないので勝手の入るシンジ、入ってすぐに目標である綾波レイを確認した。

「こんにちは」

レイはいちべつをくれるだけで後は無視をした。

「こんにちは、レイ」

「あなただれ?」

なおもあきらめないシンジにレイが答える、まあ、当然の質問だろう。

「碇シンジ、サードチルドレン兼、国連付技術者だよ。まあバイトで国連の作戦部の顧問もやってるんだ」

「そう」

あまり興味がないようにレイは再び目線をそらせようとする。

「でもね、何よりも大切なことはぼくが君の運命の人ってことだよ。ぼくは君の会うためにここに来たんだ。これから二人で絆を作っていこうね」

シンジはレイの手をとって語り始めた。

(運命の人・・・わからない、でもこの人との絆・・・・暖かい)

レイはシンジの手から伝わってくる熱を感じていた。

(かわいい!記憶なんかよりずっといいじゃないか)

(この人は絆をわたしと作るといった、なぜだろう)

レイはなぜか心が暖かくなっていくのを感じた。

(暖かい、そうこれが気持ちいいということなのね・・・・はなしたくない)

レイはぎゅっとシンジの手を握り返した。

(レイ!うれしいよぼくの気持ちが伝わったんだね)

シンジはさらに握ってる手に力をこめる

「レイ、君のこれからのことなんだけど、ぼくといっしょに暮らしてくれないかい?」

「命令ならそうするわ」

「ちがうよ、お願いだよ」

シンジはがくっとうなだれて言う。でも手は離していない。

シンジのうなだれ様子にちょっとびっくりしたレイは一瞬と惑ってしまう。

(どうしてかしら、彼のこんな様子を見ているのはつらい)

「・・・了解」

がばっとシンジは顔をあげてレイのほうを満面の笑みで見る。

「じゃあ今から帰ろうか、レイ」

「はい」

レイはリツコの指示のよってすでに制服に着替えていたので何の問題もなくシンジの手を握ったまま、シンジについていく。

「幸せな家庭を作ろうね。大丈夫、母さんに頼めばちゃんと父さんをとめてくれるよ」

「・・・・」

妄想にひたりながら歩くシンジと顔を赤らめて歩くレイの姿を目撃した数人の証言はみんながみんな

「声をかけたら馬にけられそうだった」であったのはご愛嬌だろう。

 

《リツコの研究室》

「何なのよ、このラヴラヴな雰囲気は!」

「さ、さすがよシンジ君」

クリスマスをとうに過ぎたでばがめの二人がモニターに向かって号泣していた

 

《司令室》

「こんにちは、お久しぶりですわね、キールおじさん」

「ユ、ユイ様〜〜〜??」

ホクホク顔の冬月とぼろ雑巾のようになったゲンドウを従えてユイが委員会と対面していた。

「(にっこり)少しお話があるのですが、もちろん聞いてくださいますよね」

「・・・・・」

「皆さんにもお会いしたいんですが、呼んでくださいます?」

「・・・・」

突然のことに何もいえないキールとその他の面々。

「呼んでくださいます?」

ユイの笑顔が変わったのにきづき、キールが急いでゼーレのメンバーを呼び出す。

「「「「「「「ユイ様??」」」」」」」

同じようにここにいないはずのユイに驚く面々。

「お久しぶりです皆さん、ところでわたしのいない間にずいぶんと勝手なことをしていたようですね」

「「「「「「「「「「「「「ギク!」」」」」」」」」」」」」

補完計画が中止になるのも時間の問題だろう。

 

 

 

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