ステージ4
   私の小さな宝でした

 

 

 

 

 

「いっしょにくるかい?」

小さな少年が手を伸ばす

「だれだ」

「僕?僕は・・・・・・・・・」

 

 

 

それは、雨が降り続けた日の昔話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「博士?」

「なに?」

「あまり根をつめると体に毒ですよ、ダリアさんがいないのですから」

カンビエルのセリフにシンジは苦笑する

その表情を見るとカンビエルは微笑んでシンジの手からファイルを取り上げた

シンジは軽くなった手を見つめるともう一度苦笑して席を立った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕?僕はシンジ、イカリシンジだよ」

「日本人か?」

「うん一応そういうことになるかな」

シンジと名乗った少年は苦笑した

「本当は違うのか?」

「う〜ん、まぁ、間違ってはいないよ、真実じゃないけどね」

意味深な言葉に私は眉をひそめた

「一緒に来る?そうすれば答えが出るかもよ?君の探している答えが」

「・・・・・・・もし、その答えが見つからなかったらどうしてくれる」

差し出された少年の手を握り聞いてみる

「さぁ?それを決めるのは君じゃないの?」

「・・・・そうだな」

 

 

 

 

少年の後ろをしばらく歩く

そういえば、と少年は唐突に振り返った

「君の名前は?」

「ない」

「ないさん?」

「違う。名前などない」

「ふ〜ん・・・・じゃあ僕がつけてもいい?」

「好きにしろ」

「じゃあ君の名前はカンビエル」

「・・・・・・それでいい」

「あれ?冗談だったんだけど・・・」

「・・・・・・・・おい」

「あはは、まぁいいじゃないほかのみんなも似たような名前なんだしさ」

「ほか?」

「そう、あとで紹介するね」

 

 

 

 

 

そう、雨はずっと降り続いていた、その日まで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ピンポンパンポーン

研究室にのんきな音が響いた

「お客だ」

シンジはそういうと横にあったスイッチを押した

天井から透明なカーテンが落ちてくる

床につくとカーテンは壁と保護色になりシンジの後ろのいくつもの機材を隠した

「エラ、だれ?」

『葛城大尉です』

「そ、まぁいいや、開けて」

空気の抜ける音と一緒にミサトが入ってくる

「やっほ〜シンちゃん」

その態度にその場にいた研究員全員がピクリ、と眉を上げた

「おはようございます葛城大尉何の御用でしょう?リツコ姉さんなら自分の研究室ですが?」

「や〜ね〜シンちゃんに会いに来たに決まってるじゃない!」

それに私のことはミサトでいいわ、とミサトはけらけらと手を振っていう

「・・・・・・そうですか」

シンジは大して興味なさそうに(実際ないのだが)返事をする

ミサトは研究室をきょろきょろと見回す

「なんです?」

「いや、思ったよりも狭いんだなって思って」

その発言にまたもや研究員の眉がピクリと上がる

シンジは何も言わない

「とくに重要そうな機械があるってわけでもないわよねぇ?」

「そうでもないですよ、ただ、無関係の人間に見せるつもりがないだけです」

「なっ!」

シンジの言葉にミサトはショックを受けたようだった

「そんな、無関係だなんて・・・同じネルフの職員じゃない」

シンジは技術部所属な上に階級はシンジのほうが数段上なのである

本来こんな風に気軽に話すことすら出来ないはずなのだ

「おなじ、ですか?ネルフの職員だとおっしゃるんならご自分の仕事をなさったらどうです?葛城大尉」

作戦部は決して暇ではない

国連、戦自と手を組んでいる今、情報の交換、作戦の立案、協力条約に関する協議、会議等諸々の仕事があるはずなのである

作戦部の責任者であるミサトが暇なはずなどない

「し、シンちゃんはどうなのよ!」

ミサトは怒鳴りつけるように叫ぶ

「あなたがいらしたので一時中断しているんですよ」

暗にとっととでていけ、といっているのだが

「あっそ」

ミサトには通じないようだった

「・・・あいにくなのですが、これでも忙しい身なんですよ。そろそろ仕事を始めたいのですが?」

「やったらいいじゃない?」

「・・・・・・」

シンジはため息をつく

「葛城大尉、お引取りいただきましょうか」

カンビエルがいつの間にかミサトの背後に立って言う

「なっなんですって?何であんたにそんなこと言われなくっちゃいけないのよ!」

ミサトは怒鳴るがカンビエルはそんなミサトの言葉を無視してドアを指差す

シンジは後は任せたといった風にハマエルから紅茶を受け取っている

「〜〜〜〜!!」

ミサトはそんな彼らの態度に腹を立てて近くにいたカンビエルを睨み付けた

「・・・・・・・」

しかし、カンビエルはそんな視線をものともせずに相変わらずドアを指したままだった

「ごきけんよう葛城大尉」

シンジはそういって完全にミサトを興味の対象から除外するとバルキエルになにやら指示をしている

「御邪魔さまでした!」

ミサトは乱暴に立つとドアのほうに急ぎ足手歩いていく

まるでタイミングを計ったようにドアが開きミサトが出ると追い出すかのように閉まった

 

 

 

 

 

 

「まったく、何しに来たんでしょうね?」

「どうせ僕を手なずけようとでも思ったんじゃないの?」

バルキエルの疑問にシンジはアッサリとこたえる

「僕はサードチルドレンだからね、復讐の道具を欲しがっている子供はひとつでも多くのパーツを欲しがってるのさ」

笑っていいシンジに続いて全員が笑う

「それ、無理なんじゃないの?」

「そうですね。復讐事態怪しいものです」

「セカンドインパクト、その原因が見当違いの復讐をする・・・哀しいことです」

ハマリエルの笑いをこらえた言い方に全員が苦笑する

「確かに」、と・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シンジただいま」

「ただいまシンジ」

ユイとナオコがいくつかの紙袋を持って研究室に帰ってきた

「お帰り二人とも、ご苦労様」

「楽しかったわ〜久しぶりよ、こういうのって」

「そうね、リツコのとき以来ね」

二人は買ってきた洋服をひとつずつだして並べていく

それはこれから目覚める少女のための服

「でも結構ぎりぎりだったね」

「もう夢中になっちゃって!シンジたちのも買ってきたのよ!」

その言葉にいやな予感を覚えてシンジは思わず身構えてしまう

「な、なにを買ったの?」

「う〜んとね」

ユイはそういって紙袋の中に手を入れる

ナオコも別の袋に手を入れて探っているようである

その姿はまるでドラ○モンの四次元ポケットを探っているようだった

「あ!これよこれ!」

ユイはそういうとそんなに大きくないはずの袋からやけにかさばるものを取り出した

(どうやって入ってたんだろう?)

誰もが思っただが実験台になりたくなくて誰も突っ込まなかった

そして、ユイとナオコが取り出したものは俗に言う着ぐるみ

「・・・・・・・」

「シンジとレイとミサキちゃんとおそろいよ」

「・・・・・・うさぎ?ああ・・・・やっぱり決めてはスペードのAだよね」

もはや何もいえないシンジは現実逃避することで精神崩壊を避けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、間に合ったわね」

そういって入ってきたのはリツコだった

「姉さん、大丈夫?」

普段運動していないところに走ったせいか息がかなりあがっていた

「だ、大丈夫・・・・・」

シンジにつかまって水を飲みながらうなずく

「シンジ君の希望の第一歩ですもの」

リツコは息を整えるとにっこりと笑った

シンジもつられるように笑う

「それじゃ、希望の第一歩をみんなで見届けますか」

シンジはカーテンが上がり全容が見えてきた水槽を見つめる

「エラ、ミサキの状況は?」

『レム睡眠状態に入ったtころですね』

「そう、夢でも見てるのかな」

シンジは水槽越しに眠っている少女に微笑みかける

「サキエル、ミサキ・・・僕のことを恨んでる?僕のことが嫌いになった?」

哀しそうにシンジは目を閉じる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(サキエル、ごめん)

ATフィールドを展開して、サキエルを包み込んだ。

(今はこうするしかないんだ)

サキエルを包んでいるATフィールドは次第に縮んでいく。

(せめて、魂だけは無事に)

(キャ〜〜〜〜!!!!痛い、痛いよ)

シンジの心にサキエルの悲鳴が聞こえた。

それでもATフィールドはどんどん縮んでいった。

(兄さん、痛い。やめて・・・・)

(ごめん、これしか方法がないんだ。このまま魂だけを回収するしか、方法がないんだ)

シンジがさらに強くATフィールドをはる。

(兄さんの馬鹿、大っ嫌い!!)

サキエルがそういうとATフィールドは直径二センチ程になり、管制室から歓喜の声が聞こえた。

「これより帰還します」

シンジはそういうと、ATフィールドをエヴァの目を透して回収した。

(サキエル、必ず復活させるよ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミサキ、君の昔の姿に合わせて作ったその体、気に入ってくれるといいんだけど」

シンジは気がついてはいなかったがその言葉にミサキのまぶたがピクリと動く

「お前が必要なんだ、ミサキ・・・・・・・・だから、早く目を開けて」

シンジはゆっくり目を開ける

そして、シンジに呼応するように水槽のなかでもミサキが目を開けた

まだその焦点は合っていない

うつろな瞳が何かを、誰かを探している

「兄さん、どこ?」

コポリ、と空包がのぼっていく

「ここだよ」

シンジは軽く水槽をたたく

音に反応したのかミサキの焦点が合ってくる

「兄さん?」

「おはよう、サキエル」

シンジを見つけたのかミサキは幸せそうに笑った

「兄さん・・・・・やっと会えた」

シンジの後ろでユイが水槽からミサキを出すように指示する

LCLに濡れた体のままミサキはシンジに抱きつく

「兄さん」

「ちゃんと着ないと風邪を引くよ」

「・・・・・・・・・」

シンジはミサキの体をタオルで一通り拭くとユイたちが買ってきたもののなかでも比較的まともなものを選んで着せる

着せ終わると、シンジは改めてミサキを抱きしめた

「サキエル、ごめん」

シンジはそう謝るとミサキの瞳を見つめた

「何で謝るの?」

ミサキは首をかしげて聞き返した

「・・・・・怒ってないの?」

「だからなにを?」

「僕が、サキエルを回収するときにひどくしただろ」

シンジがすまなさそうに言うとミサキは「あぁ」と納得した

「怒ってないよ。確かに痛かったけど、しかたなかったんでしょ?」

にっこりと笑ってミサキはシンジを見上げる

「今度こそ幸せになるんだよね。私たち」

「そうだよ。サキエル、僕に協力してくれる?」

「もちろんよ兄さん。私はいつだって兄さんの味方だもの」

ミサキは笑った

無邪気に笑っていた

「それから、私ミサキって言うんでしょ?」

「聴いてたの?」

「うん」

シンジはミサキの頭をなでた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シンジ君」

「レイ」

ミサキが目覚めてから二時間後、学校帰りのレイが研究室に顔を出した

レイはシンジの横に座るとユイがつれてきたミサキを見た

「目、紅い」

レイはミサキの目が自分と紅いことに気付き、シンジのほうを見る

シンジは笑っている

その笑顔はどこか今までと違っていた

レイはそのことを敏感に感じ取る

しかし、レイはいやなことじゃないと感じそのままシンジを見つめつづけた

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・ゴホン」

見詰め合う二人に終止符を打ったのはミサキだった

「相変わらずなのはわかったわ。でも一応紹介してよ兄さん」

「ああ、そうだね。レイ、ミサキだよ」

「・・・・・・サキエルね」

「そうよ姉さん、またよろしくね」

「ええ」

レイはやさしく微笑んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

予告

 

日常と非日常

家族と非家族

平和と戦い

「初号機!発進!!」

「勝負だ兄さん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

番外

 

「おそろい」

「なのvv」

「は、ははは・・は・・・・はぁ」

「かわいいわよ、クスクス」

「シンジ似合うじゃないの」

「記念写真とておきましょ」

「ママ、勘弁してよ」

 

 

 

 

 

「そういえばダリアちゃんは?」

「え?アフリカ」

「なんで?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・友愛を深めに」

「なんで引きつってるの?」

「・・・・・・・南半球なんだよ?姉さん」

「・・・・・あ」

「「なに?」」

「「今にわかるよ(わ)」」

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

おまたせしました

はたして待っててくれる方はいらっしゃるのだろうか?

見捨てられてないかしら・・・・(ドキドキ)

今回は前半カンビエルとの出会い編、後半ミサキの目覚め編でした

やっとミサキ登場です!かなりけずってしまいました

いろいろあったんですけどねコアが暴走したり、ミサキの体温が異常に上がったり・・・・

削ってしまいましたけどね・・・・・・・・

次回はシャムシェルですね、戦闘シーンがんばろう

 

 

戻る