ステージ3
       お前たちの光彩は

 

 

 

 

 

広がるは混沌

あるのは闇

望む光を求めてさまよう一つの魂

「・・・・・・なぜ・・・・」

問いに答えるものはなく

「どうして?」

一人いまだ闇を漂う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の刻から幾億の刻がすぎたのか

闇に浮かぶは一人の女

「おぬしはなぜ・・・・愚かじゃ・・・おぬしは・・・・・・・愚かじゃ」

その瞳からはおそらく涙を流しているのだろう

「なぜ妾を呼ばなんだ?おぬしの孤独は・・・・・・・・おぬしの闇は、到底一人で押さえるものではなかろうに」

女の目に一つの光景が映る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・許せ」

男はそういって涙を流した

「私はもう、とうに・・・・・・・・ていた・・・・・我が愛し子よ」

男は赤い世界に佇む少年の頬を撫でた

「・・・・めて・・・・・・がったのは・・・・・・・だったのか?」

答えは返ってこない

少年は男に気がついていない

男は知っている

それは自分が封じたのだから

「・・・・・・ムよ・・・・・・・今一度、全てを・・・・・・・・・・・・・・・・・・スよ・・・・・・・・を・・・・・・・・・」

男がなにかを呟く

そして男は姿を消してしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「愚かな・・・・・・・・・・・・・・」

女は目の前の光景から目をそらした

そうしなければ女は男と同じ道を歩んだかもしれないから

辿っては行けない道を・・・・・・・・・

「・・・・・・・・・の名にかけて・・・・・・・・・・・」

女はそう呟くと指を軽く持ち上げた

集まった闇のかけらは人の形をなし女の前に頭をたれる

「ゆけ」

女が一言言うと人の形をなした闇は再び闇へと戻り散っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「え?」

シンジは何かを聞いた気がした

「今のは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まさか、な」

シンジは愚かなもののせいですべてを覚醒させてしまった

彼のものが封じた全てのものを・・・

過去と悠久を・・・・・・

光にあふれたときを

闇に閉ざされたときを

「これが・・・これがあなたの望んだことなのですか?」

少年は遥かを見つめ呟く

しかしそれはもう届かないものであった

「・・・・・・・・・・レイ、そこにいるか?」

「・・・・・・・・・・ええ」

シンジの声に答えるように赤い海からレイが現われた

「一体我らのしたことはなんだったのだろうな」

「・・・・・・・・・・・」

シンジの呟きにレイは答えない

いや、応えられない

「もう、よいのかもしれない」

「もういいの?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

今度はシンジが沈黙した

「もう、よい・・・・とは言えぬ・・・・・・・なぜ?と今もここに深く刻まれている」

シンジはそう言うと胸をそっと押さえた

レイはその手を包み込むかのようにそっと触れた

「あの方を理解できるのはたったお一人しかおられない」

「ええ」

「なれど・・・・・」

「あの時からお二人がその居場所を異としてから全てが終り全てが始まった」

「そうだな」

二人は視線を合わせ沈黙する

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「ならぬ」

沈黙を破りシンジは口にした

「なぜ?」

「それをしては彼のものが黙ってはおらぬだろう」

「でも」

「それに、あの時に戻れたとして、我らにはどうすることも叶わなぬ」

「・・・・・・そうね」

二人は再び沈黙した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

呼ぶがいい

「「え?」」

どれくらいのときがたったのか二人はありえない声に首をかしげた

ここが光の領域である限りありえないはずの声が聞こえたから

しかしシンジは声に促されるようにつぶやいた

「・・・・・・・・サキエル?」

シンジの声にかすかに空気が反応した

「シャムシェル・・・・・ラミエル、ガキエル」

シンジの声に反応するように空気が濃くなっていく

「イスラフェル、サンダルフォン、マトリエル、サハクィエル」

シンジとレイを囲む空気は明らかに意思を持っていた

「イロウル、レリエル、バルティエル、ゼイエル・・・・・・・・アラエル」

次第に風のうねりとなり二人にまとわりつくそれはシンジとレイの顔をほころばせていく

「アサミエル・・・・・・・・・・ダブリス」

最後の子供の名を口にする

空気はそのままレイの腹に吸い込まれていった

「・・・・・・ネメシス?」

レイは腹に手を添えてその名を呼んだ

『・・・・・・本来ならこのようなことは許さぬぞ』

「なぜ?」

『意向ゆえの所業じゃ』

「そう」

『代償はおぬしで良い』

「・・・・・・・・・・そう」

「レイ!」

「いいの、それであの時に戻れるのなら」

レイは笑った

まさしく聖母の笑顔であった

『・・・・よかろう、おぬしが最後の器の誕生に遣わそう』

「・・・・・・・・いくらお前でも彼のときには戻れないか?」

『無理だ、それができるのならこの精を使い果たしてもつれて行く』

「そうか」

シンジが暗くうつむく

『先におぬしから行け、混沌の加護のもと再び腹のものたちは生れ落ちる』

「この子達には手を出さないで」

『出さぬ』

「そう」

レイは笑った

彼女が手を出さないというのならそれは絶対なのだから

『しばしの別れを告げるか?』

「・・・・・また、会えるわ」

「ああ」

「忘れてしまった私でも・・・・」

「愛しているよ、レイ」

シンジはレイを抱きしめた

「忘れてしまっても、私はお前を覚えてる」

「ええ」

「今生で叶わなかったこと、必ず・・・・・・・・全てを・・・・・」

「ええ、必ず」

シンジから離れてレイは眼を閉じる

『・・・・・・・・』

闇がレイを包むとレイの姿はもうそこにはなかった

「かならず」

シンジは眼を閉じ今までレイを抱きしめていた腕を抱えるように身体に回す

『・・・・・・記憶も力も本体と融合すれば戻るよう細工しておこう』

「・・・・・・・めずらしいな」

シンジはクスリと笑い目を開いた

そこには漆黒をまとう一人の女がいた

「その姿、相変わらずリリスの前では現さぬか?」

『我がこの姿を現すは光の前ではおぬしのみ』

「そうか」

あるいみ最大の賛辞を受ける

『なぜレイ、と?』

「この器は碇シンジのものだ、たとえ過去の影響を受けていたとしても」

『リリスが綾波レイであるように?』

「そうだ、リリンは勘違いしていたようだがな」

『・・・・・母より・・・・・・・』

「いや、いい」

『そうか』

「・・・・・・・お前の名を借りてもよいか?」

『何に使う?』

「女神にふさわしい名を与えねばなるまい」

『なら私もこの名をお貸ししよう』

二人しかいない場に第3の声が届いた

「タナトス」

『ひさしいな、アダム』

「ああ」

『お前もつわされたか?』

『ああ』

『・・・・・・・・』

『別におまえだけでは心配だったからではない』

『わかっておる』

「・・・・タナトス、死のお前がなぜ遣わされた?」

『もし望むのなら、と』

「・・・・・・余計なお世話とお伝えしてくれ」

『承知した』

「では名を借りるとしよう、感謝する、ネメシス、タナトス」

『母の意向だ』

『気にするな』

「では行くとしよう、ネメシス頼む」

シンジの言葉にネメシスが腕を上げる

シンジはレイと同じように闇に包まれて姿を消した

完全に消えたのを見計らってタナトスが口を開いた

『おまえにしては珍しいことをしたな』

『なんのことだ?』

『リリスの記憶と力のことだ』

ネメシスの眉が僅かに動いた

『別に・・・必要だと思ったからだ』

『そうか』

タナトスはうれしそうにネメシスの頬を撫でた

『信じよう、アダムとリリスを』

『ああ』

ネメシスはそういうと闇に戻り完全に消えていった

そしてタナトスは赤い世界を一瞥する

『全ての光は消えた、闇もまたいまは眠りのそこに・・・・・・・・・再生のときはなく、全ては始まりへとかえる』

その顔に色はない

『時空を超えた光、期待しよう・・・・さぁ眠りにつくがいい。目覚めることのない永久の眠りに』

タナトスの言葉に反応するように世界は終わりを告げた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「頼みましたよ、アダム・・・必ずや救っておくれ」

「わかっております」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・なんつう夢を」

シンジはいきなり目を開いた

「シンジ君?」

レイは驚いたようにシンジを見つめている

「え?なんでもないよレイ」

心配をかけないように笑う

そして目の前の光景を改めてみる

そこには・・・・・・・・

「なぜ?」

かつて彼のものに問いかけたものと言葉は同じであった

しかし含まれるものがあまりにも落差がありすぎてシンジは眩暈がしてきそうになった

そこには部下と家族が自分の作った朝ご飯を取り合いしている姿だった

あまりにも原始に近いその姿におもわず白昼夢を見たなどとは決して口にできない

言ったが最後これにまきこまれてしまう

シンジに残された道は逃げることだけだった

シンジはレイの手を取ると

「いこう」

微笑んで走り出した

レイはシンジの手から伝わってくる暖かさによっていた

「う〜ん、これも人生?」

シンジはこれも一つの人生、と自分に無理やり言い聞かせるのだった

そうしなければさる女神の陰謀などと疑ったに違いない

真実はそれこそ闇の中なのだし・・・

シンジは最上階の自分の部屋に辿りつくと

「エラご飯は?」

『セットしてあります』

「サンキュ」

シンジはレイの手をひいたまま謎の機械の前に立つ

いくつもあるボタンのうちの一つを押すと

「どうして作ったのは僕なのに、僕は冷凍保存食を食べないと行けないの?」

次々にほかほかと湯気を立てて出てきた豪華な冷凍保存食の軍を前にため息をついた

しかし下で今現在繰り広げられているであろう戦争に関わりあいたくないのもまた事実

「ま、いいか」

「シンジ君おいしい」

レイはシンジの感傷(?)など気にしない様子でたこ焼きに食らいついていたりする

「・・・・・・・ま、いいか・・・・・・・・・たぶん」

幾分自信のなくしたシンジの声が悲しく響き渡った

 

 

 

 

 

 

 

予告

 

目覚めを告げる音

新たなる始まり

少女はその瞳に何を映しているのか?

「兄さん、どこ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

番外

 

「ふぁ〜〜〜〜〜〜〜〜、ねむ」

「シンジ君」

「なに?」

「眠いの?」

「うん、一緒に寝る?」

「(こくん)」

「じゃ寝よ」

「はい」

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、シンジは?」

「さっきレイ様と上にいかれてましたが」

「む〜〜〜〜〜」

「いいじゃないの、新婚なんだし」

「む〜〜〜〜〜〜」

「ユイさん、あんまり邪魔すると嫌われますよ」

「む〜〜〜〜〜〜〜〜」

「ほらほら、お邪魔姑はたまに顔を出すのがいいのよ」

「む〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜エラちゃん」

『・・・・・・・・はい』

「シンジは?」

『寝てます』

「「「へ?」」」

「いちゃついてるんじゃなくて?」

「寝てるって・・・・」

「あのオヤスミナサイって布団かぶるやつ?」

『はい』

「ど、どうして?」

『朝食を作っているせいで寝不足だそうです』

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・シンジ(君)(A^△^;)」」」

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

戻って来たときの話が以前と完全に変わってます!

なぜなら最後のほうであのままだとかなり無理があったから

それに思うんですが、いくらアダムとリリスでも過去に戻れないと思いました

だって因果律が・・・・・彼の女神様がお許しにならないです〜〜

で、自ら戻していただきました

それに色々と小細工ができるしねvv

女神様と死神の母上様はまたいずれ登場頂きますがお二人はもう出てきません

代理人がいますからvv

 

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