私とあなたの約束

 

 

夕暮れの中、泣いている私に彼は言った。

「君が死んだら僕のものにしてあげる。ずっと傍においてあげるよ、シエラ」

「ずっと?」

「そう、君が嫌がってもずっと」

それはひどく理不尽で、自分勝手で・・・そしてとても魅力的なものだった。

「うん、約束よミハエル」

「僕は約束は破らないよ、シエラ」

契約ではない悪魔との約束。

非現実な夢として終わらせるにはあまりにも交わされた口付けは冷たく記憶に残されている。

不安と悲しみに押しつぶされそうだった、あまりにも無力だった私がすがった彼とのたった一つの約束。

 

 

 

 

 

流れるメロディに歌をのせていたときに彼は言った。

「僕が作った曲以外歌ってほしくないな」

「・・・・・・は?」

突然何を言い出すのだろうと思わず声が裏返った。

「生涯、君に曲を作ってあげる。だから僕の作った曲以外歌わないでほしい。君の歌声を僕にくれない?」

「結婚式の誓いみたいですね」

「気に入ったかい?」

「私も、あなたの作る曲を歌い続けたいです」

「ありがとう、うれしいよシエラ」

この声が続く限りエドワルドのために歌う。

それは甘美な誘惑だった。

自分を必要としてくれる、欲してくれると実感できるから。

触れられた手と唇はとても温かかった。

 

 

 

 

 

「また泣いてたんですか」

「カーティス・・・」

両親の夢を見ると知らずに涙が流れる。

「あなたは相変わらず成長しない」

それでも泣いたことを馬鹿にすることはしない。

そんな兄にほっとする。

自分たちはこの距離が一番いい、近づけば依存してきっと苦しんでしまう。

「目にごみが入ったのよ」

「そうですか」

他人から見たら冷たい兄妹かもしれない、でもシエラはちゃんと理解している。

カーティスはカーティスなりにシエラを思っていてくれていること、彼なりに守ってくれていることを。

「・・・ねぇ、覚えてる?」

「覚えてますよ」

何を、といわなくてもカーティスはわかってくれている。

両親が死んだとき、自分も死ぬと騒いだ私に言った約束。

「死にたいなら僕が殺してあげますよ」

あまりの言葉に思わず涙が引っ込んだ。

「死にたくなったんですか?」

「違うわ」

懐かしい夢を見て少しだけ不安になったから、ただ確認したかっただけだ。

 

 

 

 

 

魂はミハエルに、歌(心)はエドワルドに、死をカーティスに捧げて私は生きている。

なんて、なんて幸せなんだろう。

 

 

 

 

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