『あなたは、私のものです』

「はい」

『誰にも触れさせてはいけませんよ』

「はい」

『それでいい、あなたは私の言うことだけを聞いていればいい』

「はい・・・・・」

 

 

 

『あなたは美しくなる』

「そう、でしょうか?」

『あやかしですらひれ伏すかもしれない』

「・・・」

『きっとそれはこの仕事をする上でとても有利なこと』

「そうですか、うれしいです」

『・・・・・・・気に入らないですね』

「え?」

 

 

 

『なぜ、あなたは言うことを聞いてはくれないのでしょうね』

「すみません」

『ああ、でも人は成長するものです』

「・・・」

『だから特別に用意させましたよ』

「それ・・・は?」

『私の言うとおりにコレを飲みなさい』

「・・・・・はい」

 

 

 

「ごめん、なさい」

『ああ、何故泣くのです?』

「ごめんな、さい」

『・・・・・・大丈夫ですよ』

「・・・・・・・」

『あなたはいつもどおり、私の言う通りにしていればいいんです』

「・・・死なせてっください」

『そんなことは許さない!』

「死なせて・・・」

 

 

 

 

 

 

すがるように伸ばした手を、あの人は拒絶した。

夢の世界の美しい人がそれを受け止めた。

そして、今伸ばしたこの手を、あなたが握り締めた・・・。

 

 

 

 

あのひとが世界の全てだった ころ

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