「カヅキは私のものだ。手を出すな」

そういった瞬間、カヅキは腕の中から消えてしまった。

まるで夢であったかのように。

呆然と腕に残ったぬくもりを追う。

この力の気配はおそらく夢魔が関与しているのだろう。

クローバーの塔は夢魔の領域、ならばこうして腕の中にいたカヅキを連れ去ることもできるのは納得できるが。

「連れて行かれちゃったね」

「・・・・・・失礼する」

面白そうにいう騎士を無視して夢魔の居るであろう夢の領域に向かう。

まったく、なんて面倒な。

 

 

 

そして、今目の前にある光景はいったいなんだというのだろう。

姉と夢魔がカヅキの傍で話している。

内容は聞こえないがなによりも、カヅキの姿に言葉を失う。

カヅキは余所者、この世界の住人と違って自分の意思で成長することは出来ないはず。

なのに、姉の腕の中にいるのは自分の知っている姿よりも成長したもの。

夢魔が額に手を当てているとその姿は元の・・・よりも少し成長したようだがそれでも自分の知っている姿に近い。

「なんだ、いったい」

『知りたいかい?』

「お前にはまだ教えてやらぬよ」

「なんだというんだ!お前たちは何を知っているんだ」

『この子のすべてを』

「コレのすべてを」

『「知っているよ」』

 

 

そして、不意にカヅキの目が開き、その腕がゆっくりと上がった。

 

 

 

その手は誰に縋る 為?

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