「ああ、おまえはまた泣いているの?」
秘密の薔薇園で眠るカヅキのほほをなでる。
また夢を見ているのだろう。
「かわいそうに」
無防備に眠る姿は本当に幼く、これこそが真実なのだと思える。
赤に染まった幼子。ずっとみていた。
おまえが私を好きでいてくれたから、わらわもお前を愛しているよ。
「・・・ん」
「おきたの?」
寝ぼけて伸ばされた手を掴んで口付ける。
「・・・名前を、呼んで」
泣きそうな声で震えるように懇願する。
「私の、なまえ・・・」
目に浮かんだ滴は頬を伝い落ちていく。
「 」
呼んでやれば、ごめんなさいといってうつむいてしまう。
この子は自らカヅキと名乗った。
それは確かにこの子の名前。 この子を縛る鎖。
だけど、おまえが望むから。
「 」
わらわだけはお前の名前を呼ぶよ。
せめて、この薔薇園の中だけでも。
「ごめんなさい」
泣いてほしいのではないよ。
おまえには笑っていてほしいの。
縋り付く身体を抱きしめて背をなでる。
そうして貴方は消せない過去に責め立てられ続けるんですね
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