「何かしてないと落ち着かないんです」
そういって、カヅキお嬢様はよく私たちの手伝いをしてくれます。
なんでもボスに仕事がほしいといったら拒否されたんだそうです。
だから、仕事ではなくお手伝いをするのだといって、こうして書類の整理なんかを手伝ってくれます。
ほかの使用人たちに聞けば調理場や掃除・洗濯も手伝っているそうです。
お嬢様はいったいいつ休んでいるんでしょう?
こんなに働いて・・・お嬢様曰くお手伝いですけど、お給料ももらわないなんてどこかの双子が騒ぎ出しそうです。
「お嬢様〜、外に出るんですけどつきあってもらってもいいですか〜?」
「買出しですか?」
「はい〜」
「わかりました」
「お嬢様〜、こっちとこっちどっちがいいですか〜?」
手にしたハンカチをかざす。
「えっと・・・ミーシャさんにはこっちが似合うと思います」
お嬢様は私のように一緒に行動することが多い使用人の名前は覚えてくれます。
本当にすごいことだと思います。
「お嬢様はどんなのが好きですか〜?」
メイドの一人が棚に並んだハンカチの前に押し出す。
お嬢様はあまり好みを言いません、今着ている服もハートの女王からのプレゼントだそうです。
着続けているから気に入ってるのかときいたら、もったいないとか動きやすいから気に入ってるとおっしゃってました。
「えっと・・・」
お嬢様の世界はこの世界とだいぶ文化が違うそうで、お嬢様はいつも興味深そうにものを見ます。
その姿は本当にかわいらしくて私たちのちょっとした楽しみです。
「・・・・・・これ、かな?」
お嬢様が手に取ったのは白無地のハンカチ。
レースの装飾もなにもないものでした。
「そうですか〜」
でも、これでも私は帽子屋ファミリーの構成員です。
お嬢様が一瞬目を向けた薄い紫のレースのハンカチを見逃したりしません。
「今日はありがとうございました〜」
「いえ、お役に立てて何よりです」
買った品物のほとんどは後で屋敷に届けてもらうよう手配をして、私はお嬢様と屋敷に戻ります。
お嬢様の服はこの世界でも特殊で、こうして私と歩いていても注目を集めます。
こうして仕事着のまま数人でお嬢様を囲んだり、後ろにしたがって歩くのはお嬢様がボスのお気に入りと宣伝する効果もあります。
今までも何回かお嬢様を狙った組織がありましたけど、お嬢様に返り討ちにあってます。
お嬢様は本当にお強いです。
本当にお強いですが
「ミーシャさんっ」
「・・・・・・っ」
お嬢様は戦闘能力は銃撃のような遠距離攻撃には不向きです。
「あ・・・・・・」
「ミーシャさん、どうして」
仲間が弾道から狙撃者の位置を確認して向かっています。
お嬢様に怪我が無くてよかった。
「おじょう、様・・・これ・・・プレ・・・ゼン、トっです」
自分が死んでしまったら渡せなくなるからその前に、受け取ってください。
差し出した手にある小さな包みをお嬢様の胸に押し付けて笑いました。
これで心残りはなくなりました。
ああ、お嬢様そんな顔をしないでください。
私のような顔なしが死んだくらいで、そんな悲しまないでください。
私まで悲しくなっちゃいます。
「・・・・・・・」
「お嬢様〜、大丈夫ですか〜?」
「はい」
「その包みは〜?」
「ミーシャさんから・・・です」
「血で汚れちゃってますね〜、捨てちゃいますか〜?」
「穴もあいちゃってますよ〜」
「いいんです・・・持っていたいんです。だってそれ以外・・・」
なにもできない
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