ああ、この人は自分と似ている。
純粋に思った。
迷っている目をしている。
望みと現実が一致していないことへの苦しみ。
そして、そのことを自覚していながらも知らないふりをしている、迷子の騎士。
「アリス、いきましょう」
一触即発の空気のまま声をかける。
そうすればこの騎士は剣を引く。
そしてその予想は当たっていた。
「二人はこれからどこにいくんだ?」
軽口を叩いて視線がはずされる。
もう自分への興味は、今のところ無いようだ。
アリスには申し訳ないけれども正直助かる。
もし一対一で長時間対峙していたらイラつきから本気の殺し合いになりそうだ。
「遊園地があったところに行こうと思ってるのよ」
視線が外れている間に身なりを整える。
髪が少し斬られていたことにいまさらながら気がつく。
この騎士は、グレイと同じぐらい強いのかもしれない、もっとも、迷いがある分危ういが。
「へえ、俺も行こうかな」
「城に戻るんでしょ、早く行きなさいよ。 ビバルディの機嫌がまた悪くなるわ。」
そういえば、ビバルディはハートの城の領主だったと思い出す。
ならこの騎士はビバルディの部下なのだろう。
もっとも、本命の主は別にいそうだけれども。
本当に、嫌いになりそうだ。
ため息を飲み込んでアリスに背中を押されるエースを見送る。
振り返って合さった視線。
笑いあう。 同属嫌悪にも似た感情。
出来ればもう二度と会いたくは無いが、またすぐあってしまう予感もする。
「いきましょう、アリス」
「ああ、そうね」
この場に居続けてもなにもない。
もともと目的地があるのだから、たどり着かなければいけない。
あの騎士のように、すすんで迷子になる必要はないのだから。
まぶしいまでに晴天の空を見上げる。
この青さは殺意が滲む
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